かつては「暗黙の合意」も…女性芸人が続々と「容姿イジり」を封印する納得の理由

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笑いのあり方は時代によって変わる

 笑いはナマモノである。芸人は、観客がどこでどう笑うか、というのを敏感に察知して、ネタの中身を日々調整している。彼女たちは、容姿ネタが少しずつウケなくなっていることを感じて、それをやらないことにしたのだろう。

 しかし、今のところ、容姿ネタ全般がお笑い界から消えてしまったわけではない。少なくとも男性芸人に関しては、見た目をネタにするのが悪いことだとは思われていない。男性と女性では見た目に関する意識の違いが大きいため、男性の容姿イジりはまだそこまで嫌悪感を持たれていないのだろう。

 笑いとは緊張からの解放であり、リラックスした状況でなければ生まれないものだ。女性が容姿のことをネタにされたりすると、直接不快に思ったり傷ついたりする人もいるだろうし、そうやって傷つく人がいる可能性を想像するだけでも笑いの妨げになってしまう。

 笑いのあり方が時代によって変わっていくのは当然のことであり、プロの芸人はそれを敏感に察知している。女性芸人が続々と容姿ネタを封印しているのは時代の必然だと言えよう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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