「渡航費だけで10億円超とみられる」 国会議員らの外遊に意味はあるのか…「原資は税金」
南米訪問は成果なし?
だがその肝心の贈り物に関しても、水面下ではケチがついていた。
「日本政府は事前に江戸切子とこけしの両方とも、その画像を報道素材としてメディアに公開する予定でした。ところが、配布されたのはこけしの画像のみ。理由は“NGが出た”から。江戸切子の製造・販売側が岸田総理の意図を見透かし、『ドラゴンボール』の政治利用を嫌がったと聞いています」(同)
頼みの綱であった人気漫画を使ったアピールも、中途半端な形で終わってしまったというのである。
では、南米訪問はどうだったか。特にブラジルは南米最大の経済大国である一方、「左派のルーラ大統領は米国と中国をはかりにかけている」(同)といわれる。同国を自由主義陣営に引き留めておくことは、日本の経済安全保障上も重要だ。
だが、先のデスクは、
「日本はブラジルにアピールできるポイントがなかった。お題目のように“法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化”を唱えても、先方に響くわけがありません。共同記者発表はルーラ大統領の独演会となり、“(ブラジルの)牛肉をぜひ輸入していただきたい。首相も口にすれば、もう日本に帰りたくなくなる”などと、自国の売り込みばかりに終始したのです」
岸田総理には中国の動向を見据えてグローバル・サウスとの連携を強めたいとの意図があったとみられるが、その考えを共有できたとは到底いえまい。
「歓迎の意を読み取ることはできない」
前駐豪大使で『日本外交の劣化 再生への道』(文藝春秋)を上梓したばかりの山上信吾氏は総理のGW外遊について、
「行かないよりは、行った方がよかった」
と語りながら、以下のように苦言を呈する。
「OECD閣僚理事会が開催されたフランスはともかく、なぜ、ブラジルの訪問も5月の大型連休中になってしまったのか。日本は昨年のG7の議長国であったし、かつ昨年と今年は国連安全保障理事会の非常任理事国であるわけです。国際社会での責任を果たし、両国の関係を強化するためには、本来なら、ブラジルがG20の議長国となった年明けにも足を運ぶべきでした」
続けて、
「裏金問題もあり、総理の国内での政治基盤は弱っています。当然、そのことは駐日大使館を通じて諸外国の首脳陣にも伝わっている。フランスのマクロン大統領やブラジルのルーラ大統領が総理と一緒に写った写真を見てみてください。総理は大きく笑っていますが、マクロン大統領もルーラ大統領もそんなに笑みは浮かべておらず、歓迎の意を読み取ることはできません」
悲しいかな、相手国には望まれぬ外遊だったのではないかというのである。
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