午前4時の散歩に同行で疲弊…若手組員は組長の介護に尽力も、高齢者に冷たいヤクザ社会の実情

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高齢者に冷たい暴力団

 そして、この組長は病院を嫌っており、アパートに引っ越して来てからは最寄りの病院にもまったく行こうとしない。組長の介護を続ける組員たちの疲労度はもう限界点にまで達している。

 ところで、高齢化が著しい暴力団業界で、それぞれの団体は高齢化対策を具体的に定めているのだろうか?

 昔から葬儀などの義理事や組長の誕生会やらと、組織綱領以外の規定や行事が多いのがこの業界の特徴である。

 ヤクザゆえ、身寄りもなければ社会保障もない高齢者が目立つ。ならば、高齢者対策に関して何らかの取り決めがあってもいいような気がする。

 例えば、高齢の組長や組員への組織独自のお見舞金のようなものがあったり、既存の渉外委員長や風紀委員長のように、組織内の高齢者の世話をする委員長を設置するなど、相互扶助的な機能を整備したとしても何ら不思議ではない。

 だが、今のところ、ハッキリとした取り決め事を持っている暴力団組織はない。現状では、高齢化した組長や兄貴分を、子分や舎弟たちがそれぞれ世話をするというのが通例となっている。もちろん、まったく世話をせずに置き去りにしているケースもある。

 40代で若手組長と呼ばれる面々の中には、若い衆の面倒も見ながら、自分が所属している上部団体の高齢者組長の面倒も見ている者もいる。自分が暴力団員になった時、将来、高齢者となった組長の世話をするとは微塵も思ってはいなかったはずだ。

藤原良(ふじわら・りょう)
作家・ノンフィクションライター。週刊誌や月刊誌等で、マンガ原作やアウトロー記事を多数執筆。万物斉同の精神で取材や執筆にあたり、主にアウトロー分野のライターとして定評がある。著書に『山口組対山口組』、『M資金 欲望の地下資産』、『山口組東京進出第一号 「西」からひとりで来た男』(以上、太田出版)など。

デイリー新潮編集部

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