ヤクザ社会を悩ます高齢化とIT化問題…パソコンの“再起動”を知らない若手組長はトンデモ発言を連発

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シノギの開拓にも弊害

 ある日、スマホのトラブルについて「20代なら知ってるだろ」というノリで40代の組長から質問を受けた若手組員は当然のように「フリーズが起きた時はストレージを開いてキャッシュを削除するか、再起動を試せば復帰できると思います」と説明した。

 だが長期服役のせいで、ずっと一般社会から離れていたこともあり、ネットになじみがない若手組長は「ストレージって何だ?」、「キャッシュって現ナマ払えってことか?」「再起動なんかしたら中身が壊れるだろ? いいのか?」といった疑問を連発した。もはや若手組員は呆れるのを通り越し、恐怖すら感じたという。

 こうなると、もはやジェネレーションギャップといったレベルではない。そして、こうした状況は、暴力団が新しいシノギを開拓しようとした際にも大きな弊害になっている。

 一般社会の若者と同様に、ネットビジネスへの新規参入を図りたい若手組員としては、組長にアイディアを懸命に説明する。だが組長の知識不足による理解力の欠如から、ゴーサインが出ることも、応援してくれることもなかなかない。若手の結論としては「ネットビジネスを諦める」か「こっそりやるしか仕方ない」となってしまう。

暴力団業界にはびこる「無知」

 極端な話をすれば、非合法ビジネスでもやってのける暴力団業界で働いているはずなのに、合法のネットビジネスは立ち上げを諦めざるを得ない。

 組長に内緒にしてネットビジネスを始めれば、バレたときが大変だ。組長は自分の知識不足、勉強不足は棚に上げ、若手組員が秘密にしていたことだけをネチネチと説教する。若手組員は「たまったもんじゃない」となってしまう。

 結果、いつまでたっても兄貴分がやっている昭和のシノギの手伝いをやらされたり、ハイリスクな非合法ビジネスに手を染める毎日が繰り返されていくばかりだ。

 若手組員は犯罪ではなく、合法的なビジネスにチャレンジしようとしている。組としては応援すべきなのだが、それがネット関連となると、途端に「無知」が災いして頓挫してしまう。これは暴力団業界にとっては、明らかなマイナスだろう。今のところ、暴力団業界が多少でも第4次産業革命(IT革命)の恩恵に与る可能性はとても低い。

 こういった問題に気づいている若手組長もいる。「若い衆は自分の組長ひとりだけを見ていればそれでいいが、組長は若い衆全員のことを気にかけてならなきゃならない」と彼らは言う。

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