「空き家率」世界一の日本はヤバい…新築住宅優遇策のツケ、政府は中古住宅に目を向けさせる政策を
新築住宅への優遇策のツケ
高度成長期以来、住宅の建設は、それ自体が建設や不動産業界の売上げ増につながるばかりか、家具や電化製品などの新規需要も喚起するため、新築住宅に対する優遇策が繰り返し打ち出されてきた。戦後の住宅不足は、1970年代にはほぼ解消されたはずだが、その後も景気対策、需要刺激策として、住宅ローン減税などが次々と打ち出され、新築住宅の建設が推奨されてきた。そして、いまなお景気を見る指標の一つとして、新築住宅の着工件数が重視されている。
日本の人口は2008年の1億2808万人がピークで、世帯数も2023年の5419万世帯で頭打ちだと推計されている。そのことは、今後、新築住宅を建てれば建てただけ、空き家が増えるということを意味する。それなのに、長く政策によって誘導されてきた日本人の新築志向は、解消されていない。人口も世帯数も減少に転じ、黙っていて空き家が増えていくという状況下で、相変わらず新規の住宅開発が盛んな日本。これでは今後も、空き家率は勢いよく高まらざるをえない。
遅ればせながら2015年、議員立法による空き家対策特別措置法が施行され、市区町村による空き家への立ち入り権限が認められ、倒壊の恐れがある場合の撤去や修繕命令、行政代執行なども可能になった。2023年には、その一部が改正され、強化された。
それはいいとして、もっとも重要なのは、新規の住宅開発を大きく減らし、中古住宅の流通シェアを劇的に高めていくことである。ところが、2023年度に首都圏で新築分譲されたマンションだけで2万6798戸におよぶのは、異常なことだとしかいいようがない。
中古物件に目を向けさせるしかない
いまからは、これまでと発想を逆転させるしかあるまい。家は新しく建てるもの、という私たちに刷り込まれた認識を消し去るために、住宅を新築する人に対しては、従来のような優遇策とは反対に、リスクを負わせることだ。具体的には、課税を強化する。住宅が新築されれば、それが空き家の増加に直結し、日本の将来に暗い影を落とす。そうである以上、新築住宅が増えないように対策を講じることが必要である。
だが、空き家を購入し、老朽化が著しい住宅を取り壊して新築する場合は、別のあつかいにする必要がある。解体費用を国や自治体が補助するほか、住宅建設にもなんらかの優遇策が講じられてもいいだろう。
そして、一戸建てでもマンションでも、中古住宅を購入する場合には、税制上の大きな優遇措置を受けられるようにする。快適に暮らせなければ、中古住宅を選ぶ人は増えないだろうから、既存の住宅をリフォームしたり、リノベーションしたりする費用に対しても、優遇策を講じる必要がある。
このように政策によって、これまで新築住宅に向いていた日本人の目を、中古住宅に向けさせる以外、空き家問題を解決する方法はない。それが省エネやSDGsの実現にもつながることは、いうまでもない。
あまり荒療治をすれば、建設や不動産業界を窮地に追い込む、という反論もあるかもしれない。しかし、これらの業界の刹那の利益を優先すれば、日本に未来はない。建設や不動産業界は少なからず、リフォームやリノベーションをふくめた中古物件を活性化する方向に業態転換する必要がある。それを促さないかぎり、やはり日本に未来はないと強調しておきたい。
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