プロ野球、ルーキーの“現在地” 「巨人3位」と「楽天4位」の活躍にスカウト陣から驚きの声 「正直、ここまでできるとは…」

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楽天にとって“嬉しい誤算”

 このスカウトの話すように、佐々木は帝京、東洋大と名門チームでプレーしてきたが、大学時代に打率3割を超えたシーズンは一度のみ。ベストナインなどのタイトルを獲得した経験もない。

 巨人のスカウトの話では、社会人1年目に出場した日本選手権でセンター左に放ったホームランが強烈な印象を残し、そこから熱心にマークするようになったという。社会人野球の日本選手権は、ドラフト会議後に行われることもあり、全国大会にもかかわらず、視察しているスカウトは多くない。そこでのプレーを見逃さなかった巨人の勝ちと言えそうだ。

 もう1人、予想外の活躍を見せているのが、松田啄磨(楽天4位)は、献身的にチームのブルペンを支えている。ここまで勝利やホールド、セーブはないものの、6試合13回を投げて、防御率は2.77をマークしている。4月13日のロッテ戦では、発熱で急遽登板を回避した荘司康誠に代わり、緊急先発を任され、4回を1失点と好投を見せている。

 松田は大阪産業大時代、4年春のリーグ戦で7勝0敗と素晴らしい成績を残しているものの、全国大会の出場がなく、関西でも知る人ぞ知る投手だった。松田を視察したスカウトは「育成で獲得できるなら面白い選手」と話すなど、評価は高くなかった。身長186cm、体重74kgと体つきは頼りないため、即戦力ではなく、数年後の戦力として考えるのは当然で、楽天にとっては“嬉しい誤算”と言えるだろう。

ルーキーは「体力面で躓くことが多い」

 昨年も育成ドラフトで入団した松山晋也(中日)がいきなり一軍のセットアッパーとして大活躍を見せたが、毎年、下位指名でも早々に台頭してくる選手がいる。

「大学生でも社会人でも、当然ですが、プロに入れば周りのレベルが一気に上がることになります。そのレベルに達するまでに時間がかかるのは一般的ですが、中には、すぐに順応することができる選手もいるんですよね。あと大事な点は、やはり体の強さです。プロのシーズンは長いですから、体力面で躓くことが多い。こういう部分は、(出場した試合を)ちょっと見ただけではなかなか分からないので、難しいところです」(前出のパ・リーグ球団スカウト)

 シーズンは100試合近くを残しており、ここまで順調なルーキーも調子を落とすことは十分に考えられる。その一方で、驚きの進化を遂げて、ここから一軍の戦力になる選手が出てくるはずだ。予想外の“新星”が飛び出してくることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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