「ワンオクがどこにも見えない!」 大規模ライヴ「見切れ」問題の解決策を考える

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日本もよりきめ細かい価格設定に?

 同じ2019年には、アイルランドのバンド、U2が来日。さいたまスーパーアリーナで、ステージ近くのスタンディング・エリアは6万円。グッズ付きのSS席が3万8300円。もっとも安いスタンディング・エリアの後方は1万5800円だった。

 このツアーを筆者は、アメリカのフロリダ州マイアミの、ハード・ロック・スタジアムで観た。この時もマディソンのザ・フーと同じように、細かい価格設定が行われていた。

 当時還暦近かった筆者にとって、スタンディングのアリーナ・エリアで3時間近いショーを立って観るのはつらい。しかも身長は160センチ台なので、巨大なアメリカ人に囲まれたらステージは見えない。そのうえアリーナは価格が高い。だから、ネット画面で下手側のスタンド席を選んだ。2階席だったこともあり、日本円で7000円台だった。もちろん満足した。アメリカで観る場合のチケット代は、屋内よりも野外会場のほうが概して安い。

 今後、日本のイベンターもよりきめ細かく価格設定することが求められるようになっていくのではないだろうか。そんなことをしたら手間がかかり、チケット代が高くなってしまう可能性もあるとはいえ、AI技術を導入して解決できないものだろうか。

 ちなみに筆者は、2000~5000席のホールならば単純にステージ近くの席が確保できるとうれしい。一方、3万人を超えるスタジアムの場合はステージから遠い席も好きだ。会場全体を俯瞰できて、音楽だけでなくファンの熱狂も楽しめる。とくにロックの場合、すでに還暦を過ぎた身でずっと立つのはつらい。年齢相応に、傾斜のあるスタンド席で座ったままステージを楽しみたい。

神舘和典(コウダテ・カズノリ)
ジャーナリスト。1962(昭和37)年東京都生まれ。音楽をはじめ多くの分野で執筆。共著に『うんちの行方』、他に『墓と葬式の見積りをとってみた』『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』など著書多数(いずれも新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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