肩こり、花粉症が改善! 知られざる「鼻うがい」の効果とは…「喉うがいよりも効果的」
既に発症している人にできること
さて、ここまで上咽頭を鍛え、慢性上咽頭炎を予防するための鼻うがいの効果を紹介してきました。でも、すでに慢性上咽頭炎を発症している人はどうすればいいのでしょうか。もちろん、鼻うがいにも慢性上咽頭炎の症状を改善する一定の効果はありますが、それよりもてきめんに効く治療法があります。それが「上咽頭擦過(さっか)療法」、通称「EAT」と呼ばれる治療法です。
鼻うがい同様、この治療法も至ってシンプルです。塩化亜鉛溶液に浸した専用の長い綿棒を鼻または口から挿入し、綿棒の先端を直接、上咽頭にこすりつけるだけです。こうした治療を1週間に1回程度続けて上咽頭に起こった炎症を鎮静化することで、慢性上咽頭炎はキレイに治ってしまいます。冒頭で紹介した「どうしても血尿が消えないIgA腎症の患者さん」に行った治療が、この「EAT療法」です。
二つの難点
ただ、この画期的な治療法にも難点がいくつかあります。その一つが、とにかく「痛い」ことです。慢性上咽頭炎の患者さんは、塩化亜鉛のついた綿棒の先が上咽頭に触れるだけで、綿棒の先にべったりと血が付くほど強い炎症を起こしています。そのため、強くこすってもいないのに激痛が走るのです。女性の患者さんの中には「出産より痛かった」と話す方もいるくらいですから、半端な痛みではないことが分かると思います。しかし、涙を流すほど痛がった患者さんでも、ほとんどの方が治療を継続されます。痛ければ痛いほど得られる効果が大きいのも、この治療の特徴といえるでしょう。
難点の二つ目は、この治療法を実施している病院が少ないということです。慢性上咽頭炎という概念は特段新しいものではなく、今から60年ほど前に東京医科歯科大学耳鼻咽喉科の堀口申作教授が精力的に研究し、提唱した概念です。しかし、その後、日本でも世界でもこの病気についてさらに研究が深められた形跡はなく、今では耳鼻科の教科書にも載っていません。
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