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敵もいないのに戦闘員たちが暴れまわる事態
ただ、上咽頭を覆う粘膜も常に全ての外敵の侵入を食い止めることができるわけではありません。繊毛上皮細胞の粘膜をすり抜け、上咽頭の深部にウイルスや細菌が入り込むと、繊毛上皮から攻撃指令が出されます。すると白血球を構成する「好中球」や「リンパ球」、「マクロファージ」といった戦闘部隊が活性化し、細菌やウイルスを攻撃します。上咽頭では細菌やウイルスの侵入をせき止めるべくこのような戦いが繰り広げられており、この状態を「炎症」と呼ぶのです。
従って、炎症は体が外敵と闘っているサイン。ただ、困ったことに、炎症状態が長引くと私たちの持つ免疫システムが誤作動を起こすことがあるのです。
上咽頭での戦いで勢いづいた戦闘部隊は、上咽頭だけでは飽き足らず、血液にのって全身を駆け巡り、静かに休んでいる戦闘員たちをたたき起こします。そうして、体のいたるところで敵もいないのに戦闘員たちが暴れまわる事態が発生するのです。このように、体の免疫システムが自分の正常な細胞を攻撃し始める状態は「自己免疫疾患」と呼ばれ、腎炎や関節炎、慢性皮膚炎などがこれに分類されます。これこそが、上咽頭が原病巣となって二次疾患が引き起こされる慢性上咽頭炎のメカニズムです。
自律神経の不調も
体のいたるところに二次疾患を引き起こす慢性上咽頭炎ですが、厄介なのは原因になるのがウイルスや細菌だけではないということです。実は、ウイルスや細菌に感染していなくとも、黄砂などの空気の汚れ、冷え、低気圧の接近やストレスなどで同じように慢性上咽頭炎が悪化することがあります。
また、慢性上咽頭炎は自律神経の不調も引き起こします。これは、上咽頭が位置する場所が自律神経をつかさどる脳の視床下部に近く、自律神経の乱れと慢性上咽頭炎が密接にリンクしてしまうためだと考えられています。慢性上咽頭炎の治療によって、片頭痛や肩こり、強い倦怠感や集中力の低下といった自律神経の乱れに由来する症状が改善することがあるのは、そのためです。
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