【わいせつ教員裁判・傍聴妨害】横浜市教委の説明は“虚偽”…専門家は「本音はバレてしまったか、くらいの感覚で反省などしていない」
知る権利を抑圧
元参議院議員で教育評論家の小林正氏は、横浜国立大学を卒業後、神奈川県川崎市の市立中学校に勤務した経験を持つ。
1989年7月の参院選で旧社会党から出馬して初当選。党では右派に属し、1994年には新進党に入党した。政界を引退してからは2006年6月、新しい歴史教科書をつくる会の会長に就任して話題を集めた。
小林氏は「教員が被告の刑事裁判で、教育委員会が動員をかけて傍聴席を埋め尽くすなど、ただの一度も聞いたことがありません」と驚く。
「横浜市教委の集団傍聴問題は、公務員として絶対にやってはならないことの一つであることは改めて指摘するまでもないでしょう。市教委は横浜市民だけでなく、自分たちの仕事を通じて最終的には国民に奉仕することが求められています。業務内容も狭義の地方自治という観点からではなく、国民の目線から適格かどうかを問うべきです。市教委が文書で動員を命令したという報道が事実なら、市教委は国民の知る権利を抑圧したことになり、極めて問題です。さらに組織が身内の不祥事を隠すような行為に手を染めると、その組織は不祥事の温床となる可能性が高くなります。組織のメンバーが『悪いことをしても組織が守ってくれる』と考えてしまうからです。市教委も同じ状況に陥っていると言えます」
反省ゼロの可能性
その一方で、小林氏は「公務員として言語道断の行為であるのは間違いありませんが、同時に、いかにも公務員がやりそうなことだとも言えます」と指摘する。
「公務員が保身に走る傾向があることはよく知られているでしょう。また自分たちで目標を設定すると、その実現のためにはなりふり構わず暴走することは、公共事業などでもよく見られる光景です。公務員として『裁判で仲間の不祥事が世間に知られないよう防衛する』という矮小な目標を設定した瞬間、彼らはありとあらゆる手段を使います。優秀な職員もいますし、ノウハウも豊富です。市教委の組織力を“集団傍聴”、“他者の傍聴排除”という一点に集中させ、完璧に実現してしまうわけです。きっと市教委の本音は『バレてしまったか』くらいのはずで、反省などしていないと思います」
註:性犯罪公判、多数の職員動員 第三者傍聴防ぐ目的、横浜市教委(共同通信電子版:5月21日)