「タレ込んだのは身内の誰か」 犯人探しも想定される読売新聞の激しい「検察バッシング」記事の背景を探る
新証言の迫真度
とりわけ取り調べを担当した検事にとって、「買収された」との自白を得られるか否かは出世にも関わる大きなポイントだった。結果、不起訴をちらつかせてその事実を認めさせるという事例が頻出したということなのだろう。
読売新聞は2023年7月に、「特捜検事、供述を誘導か」の見出しで、「取り調べた政治家に対して不起訴にすると示唆し、現金は買収目的だったと認めさせていたことが、読売新聞が独自に入手した録音データで明らかになった」と報じていた。
さて、今回の「新証言」はこれに続くものだが、当時捜査に関与した特捜検事側が取材に応じたというのがポイントだ。
「今回の記事では、どの検事が誰から構図通りの証言を得られたか否かについての進捗状況が〇か×で一覧表にまとめられ、現場の検事もそれを閲覧できたともありました。なかなかリアリティがありショッキングな内容です。取材に応じた人物が誰なのか“犯人捜し”が想定される中で、それでも暴露したのはかなりの覚悟を持ってのことでしょう。おそらく現在は検事を辞めて弁護士をやっているのだと思われますが」(同)
批判のターゲット
特捜検察は、2010年に発生した大阪地検特捜部の証拠品改ざん事件で「最強の捜査機関」から一気に転落し、解体論も浮上した。
「その後、謹慎期間というわけではないでしょうが、独自の捜査を行わない時期があったとされています。自戒と自省のもとに改革を進め、次第に政官財界に切り込む事件を担うようになりました。その“復権”について特捜至上主義が強まってしまわないかという危惧を元特捜検事はこぼしていましたが、なかなか厳しい指摘の声だったと思います」(同)
検察がどん底から復活を遂げるにあたっては、2017年1月から20年6月まで東京地検特捜部長を担当し、その後も大きな事件を実質的に指揮する森本宏氏の存在が大きいとされる。森本氏は特捜部長在任中にIR汚職事件やカルロス・ゴーン事件を担当し、最高検刑事部長となった後、自民党派閥の裏金問題の捜査をコントロールしているとされる。将来の検事総長間違いなしと評される人物だ。
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