マンション購入を検討中の方は必読…ケース別シミュレーションで分かった「購入と賃貸」どちらが得か

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賃料相場は不動産価格に比べて動きにくい

 2つ目のケースは地方都市のファミリータイプの物件を想定してもらった。

 販売価格が4000万円相当のマンションだとして、購入の場合は管理費など込みで月の支払いが11万3000円、固定資産税が10万円とする。賃貸の場合は家賃が13万円。こちらも2年に1度、更新料がかかる設定とする。いずれも先と同じように40歳から住み始めたとした。

 すると、45歳の段階で累積支払金額は賃貸が975万円、購入が約1273万円。60歳の段階では、賃貸が3406万円、購入が約3457万円とかなり近接する。そして、63歳の段階で賃貸が3900万円、購入が約3894万円と逆転するという結果になった。

「このケースですと、64歳以降は購入していた方が得だった、という形になります。ただし、こうしたシミュレーションはエリアによってだいぶ違ってきます。例えば、東京都内、特に湾岸部など好立地では不動産価格が高騰し、1億円以上の物件も普通にあります。では、賃貸価格もそれに連動して上がっているかといえばそうでもありません。賃料相場というのは不動産価格に比べて動きにくいという特徴があります」

 そのため3つ目のシミュレーションは都内の高級住宅街である湾岸部にあるマンションを想定した。

 不動産価格は1億円、購入の場合の月々の返済額と管理費などを含めて月額28万円。ローン完済後は維持費や固定資産税だけがかかる。賃貸価格は月額22万円と仮定した。

 すると45歳の段階で累積支払金額は賃貸が1650万円、購入が3106万円、60歳の段階で賃貸が5764万円、購入が8371万円といつまで経っても金額が近接していかないのである。

東京は14.81倍

「結局、賃貸より購入の方が得となるのは91歳の時でした。これは物件価格に比して賃料をかなり安く想定していますが、実際、物件価格が急上昇しているエリアでは起こっている組み合わせと言えます。東京では特に他のエリアに比べてこうしたことが起こっています」

 日本では現状、東京都内の不動産価格が突出して高い。年収の何倍で新築マンションを購入できるかという指標となる年収倍率で見ても東京は他の地域に比べて 群を抜いている。東京カンテイ によれば、2022年の新築マンションの年収倍率について、全国平均は9.66倍、東京は14.81倍となっている。

「東京の不動産価格の高騰は円安の影響もありますし、海外からの投資の影響も大きい。海外からみれば、日本の不動産といえばまず東京ですから」

 では、だからといって、購入の方が損なのか、といえばそんなことはなく、

「そうしたマンションは資産という点では極めて高い評価となります。将来の売却を考えれば、購入した物件の価格が上がる期待値もあります。不動産を購入してからどの段階で“得になるか”は賃料相場との見合いや資産としてどう考えるかによるので、こうした試算はあくまで参考程度でしかありません。どうするかの判断にはもっと別の指標、例えば損得ではなく、自分が自宅に何を求めているかという視点が重要でしょう」

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