「金八先生」大ヒットの理由は脚本家の“先を読む感覚”にあった 生みの親・小山内美江子さんが試みた“問題提起”とは?

エンタメ

  • ブックマーク

せりふと構成力がともに優れたまれな脚本家

 テレビドラマ「ああ禁煙」や「花の吉原 雪の旅」などで小山内さんと組んだプロデューサーの石井ふく子さんは振り返る。

「意見をガンガン言い合える人でした。せりふと構成力がともに優れる脚本家はまれです。登場人物が小山内さんの中に生きて動いていて、せりふに自然と感情が込もっていた。これを伝えたいとの思いもドラマの展開に無理なく入っていた。間違ったことを書いて観た人が信じてはいけないからと調べに調べていた。ここはおかしいとプロデューサーから言われるのも恥ずかしいとお考えで、きっちりしていて仕事がしやすい。脚本が遅れたこともありません」

第7シリーズで事実上「外された」

 先を読む感覚はさえ、早くから性同一性障害を織り込んでいる。だが、04年、第7シリーズの途中で降板。

 TBS側は小山内さんの体調不良と説明したが、実際は意見の相違で事実上外されていた。非現実的で過剰な演出が行われたと疑問を呈していたのだ。番組は2011年まで続くが、脚本に携わっていない。

 還暦を迎えた90年以降、ボランティア活動に尽力。カンボジアを中心に約400棟の学校を建設、運営も支援。寄付を募るほか私財を投じた。教育は人をつくる礎との信念は金八先生と重なる。90歳を過ぎても取り組んだ。

 5月2日、94歳で逝去。

「金八先生の終了後、いい俳優がいたら教えてと言うと、上戸彩さんを紹介してくれました。金八先生のせりふも元は小山内さん自身の言葉だと出演者は受け止めていましたね」(石井さん)

週刊新潮 2024年5月23日号掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。