視聴率2強「日テレ」「テレ朝」の明暗、「フジ」の苦境は鮮明に…「民放在京キー局」23年度決算を読む

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民放は楽観論すぎる

 各局のTVerの広告売上高は急伸しているものの、これもCM売上高の20~40分の1に過ぎない。番組の制作費はCMのスポンサーが出しているため、TVerの広告料金は高く設定できないのだ。再放送番組と似た扱いなのである。収益の柱になるはずがない。

 一方、TBSは「アジア大会 中国・杭州」(2023年9月24 ~10月8日)放送の出費があったので例外だが、CM売上高と制作費はほぼ比例する。

 CM売上高が落ち、制作費が下がると、人気者や大物を番組に起用しにくくなる。番組で使うセットやCGにも費用を掛けにくい。すると、番組のクオリティの維持が難しくなり、ますます視聴率が獲りにくくなる。負の連鎖に陥りかねない。

 制作費が一番低いフジの場合、平日の午後1 時50分から同3時45分をドラマの再放送枠としているが、これも制作費軽減のためというのが民放界の共通認識。確かに制作費は大幅に軽減できるものの、TVerと同じでCM枠を高くできないのから売上高も伸びない。

 フジは「めざましテレビ」(月~金曜午前5時25分)などのある平日の午前帯は堅調だが、「ぽかぽか」(同正午)はほぼ1%台の個人、ほぼ1%割れのコアが1年以上も継続している。プライム帯もバラエティのヒット番組が乏しい。苦境が続いている。

 ドラマはどうだろう。2023年度の個人視聴率ベスト5を見てみたい。

(1)TBS「VIVANT」(9月17日)個人12.9%、コア10.1%
(2)日本テレビ「24時間テレビ スペシャルドラマ『虹色のチョーク 知的障がい者と歩んだ町工場のキセキ』」(8月26日)個人8.1%、コア6.1%
(3)TBS「ラストマン-全盲の捜査官-」(4月23日)個人7.8%、コア5.5%
(4)TBS「TOKYO MER~隅田川ミッション~」(4月16日)個人7.8、コア4.9%
(5)テレビ朝日「相棒22」(3月13日)個人7.6%、コア2.9%

※連続ドラマは最高値

 TBS作品が3本も入っている。同局のプライム帯のコア2位を支えている。フジも「風間公親-教場0-」(2023年4月10日)が個人7.2%、コア4.0%で6位に入り、気を吐いている。

「VIVANT」や「TOKYO MER」、「教場0」は目新しく、手間の掛かったドラマだった。一方、今は記憶喪失ドラマがプライム帯に5本もある。少し前に多かったタイムリープ作品より美術費などが掛からないことも理由の1つではないか。視聴者を侮りすぎだろう。

 現在、民放のプライム帯にはドラマが16作品ある。有料動画配信で再利用できるだろうと考え、増やした。各局はその売上高でCM売り上げの減少分を埋めようとしている。

 しかし、1本平均3000万円でつくり、おまけに企画も脆弱な民放のドラマが、1本に1億円数千万円かける「忍びの国」や米国作品「クイーン・オブ・ザ・サウス ~女王への階段」(ともにNetflix)に勝てるのか。

 一部俳優たちはギャラが高く、制作日数にも余裕のある動画に軸足を移しつつある。黒船が襲来しているというのに民放は楽観的過ぎる。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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