巨人・高橋礼を今さら2軍に落としてどうするのか【柴田勲のコラム】

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「鬼門」なんてない

 巨人、マツダでは今季4敗2分と勝ち星がない。昨季も3勝9敗と苦戦した。2014年から勝ち越しができていない。「鬼門」という言葉が使われている。いいことが起こらず、行きたくない場所を指す。でも、そんなものはない。オカルトじゃないんだから。

 広島の熱狂的なファンによる応援が広島ナインを後押し、巨人ナインに重圧をかけている。こんな見方があるようだが、私に言わせれば関係ない。ならば甲子園はどうする。甲子園の阪神ファンは広島ファンに負けず劣らず熱狂的だ。

 巨人を迎えた広島は主力投手を繰り出す。3連戦の先発は大瀬良大地、九里亜蓮、そしてアドゥワ誠、中継ぎ陣も充実しているし、抑えには栗林良吏がいる。広島投手陣の失点は90、リーグ最少だ。

 巨人戦とあって大勢のファンが注目している。必死でくる。打たれたら何を言われるか分からない。巨人の打者たちは甘い球を簡単に見送ってボール球に手を出す。好機を作っても一本が出ない。攻略できない。逆に広島打者たちは思い切り振ってくる。粘る。甘い球をしっかり捉える。末包昇大がいい例だ。昨年に続き天敵になった。

 不運な当たりやつまらないミスもよく顔を出す。いまは情報が多いからいろいろなことを言われる。鬼門に加えて「魔物」なんて言葉も登場する。だが、3連戦の初戦をエースの戸郷翔征で落としたのだから、巨人の戦いが苦しくなるのは当たり前だ。戸郷も毎回毎回は勝てない。

坂本はまだまだいける

 つまらないミスはヘタクソなだけだ。戦い方もそうだ。18日の試合、1点差の9回1死一、三塁で小林誠司が一塁前にセーフティスクイズを仕掛けた。三塁走者・重信慎之介のスタートが遅れてアウトになった。前にもこんなシーンがあったが、ここは普通にスクイズだ。

 広島は打者が小林とあって警戒していた。これが丸佳浩や坂本勇人だったら、警戒しなかったろう。成功していたかもしれない。

 阿部監督は初戦を落とすと「鬼門っぽく負けたから、バッチリ切り替えます」と話していた。あとの言葉はいいけど、指揮官が鬼門を持ち出すのはどうか。ナインにも伝わる。後ろ向きの言葉であり、逃げ口上とも受け取られる。ここは報道陣に聞かれたら「そんなものはない」とキッパリ否定してほしい。負けるのにはなんらかの理由がある。

 坂本が通算187度目の猛打賞をマーク、長嶋(茂雄)さんを超えて歴代単独3位に浮上した。また福本豊と並ぶ歴代2位となる通算449本目の二塁打を放った。35歳、まだまだいける。さらなる高みを目指して頑張ってほしい。

 巨人は21日から東京ドームで中日2連戦、24日からは甲子園で阪神3連戦だ。交流戦前の大事な5試合となる。

 巨人は4月12日から14日の東京ドームでの広島3連戦を3タテしている。本拠地では勝っている。マツでの3連敗を引きずらず、気持ちを切り替えて戦いに臨んでもらいたい。(成績などは20日現在)

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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