大城卓三(31)2軍降格でも主導権、FAあえて“1年延期”という選択肢 阿部監督「一見追い込んだようでも…」巨人には弱み
史上稀に見るFA捕手の豊作年
「阿部監督は以前から大城に、配球の工夫が足りないなどと守りに不満を口にしていました。ご自身は現役時代、周囲にリードを叩かれながら正捕手になったので、原前監督がポジションを安泰にしていた大城には危機感がありました。コーチ時代には大城の緊張感を維持しようと2番手捕手を獲得し、刺激を与える必要性を説いたほどです。今季は投手とのコミュニケーションで小林や岸田を見習うよう諭すなどしていましたが、打てず守れずではファーム行きは致し方ありませんでした」(巨人のチーム関係者)
それでも、開幕前の大城には予期していなかった事態に違いない。しかも、終了後にはFA権を取得する可能性がある、選手人生においては極めて重要なシーズンだ。FA権取得の条件を満たすまでの1軍登録日数、残り105日は決して少なくはない数字である。
さる在京球団編成担当によると、大城にはあえて今オフはFA取得を先送りする選択肢も出ているという。
今オフのFA市場は史上稀に見る「捕手豊作」の年になりそうだ。ソフトバンクの甲斐拓也(31)と阪神の坂本誠志郎(30)は今季既に国内FA資格条件を満たし、中日の木下拓哉(32)も条件を満たすまで、あと50日ほどだ。開幕前からFA権を保持している阪神の梅野隆太郎(32)は複数年契約が切れ、復活気配の小林は巨人とは単年契約だ。捕手は育成に時間がかかり、どの球団にも補強は垂涎の的だけに、各球団とも調査に余念がないようだ。
巨人にアドバンテージはない
豊作であることは、選手目線で見ると、ライバルが多いということにもなる。大城は今回の降格をチャンスと捉え、調整にたっぷり時間をかけることで、自身の希少性が高まる来オフまでFA権取得を遅らせるという手もある。
「そうなると契約面が有利になることが期待できます。森(友哉捕手/22年オフに西武からFA、現オリックス)のように、強打の捕手ならより価値は高まります」(同編成担当)
大城の現時点の年俸はチーム内でBクラスとみられ、移籍先の球団の補償の負担が大き過ぎるということはない。来オフでもFA宣言すれば、複数球団による争奪戦は必至か。
そして近年のFA戦線を振り返ってみると、巨人はブランド力による優位性を失ったと言っていい。昨オフはオリックスからFA宣言した山崎福也投手(日本ハム)の獲得に失敗するなど、ここ3年、FA補強ができていない。今季もメジャー帰りの筒香嘉智外野手(DeNA)を獲り逃した。
「大城の扱いを見ても、阿部監督が自身の野球で捕手を極めて重要視していることは明らかです。それだけに見る目は厳しく、求めるレベルも高いということです。ただでさえプレッシャーが大きいFA移籍で、指揮官のプレッシャーまではね返す覚悟を持つ捕手が今、どれだけいるでしょうか。巨人がFAで他球団の捕手を獲りにいっても、簡単には成功しない時代です」(同前)
[2/3ページ]