身に覚えはないのに…「浮気をされた」と離婚調停 41歳夫が語る、最初から不可解だった「結婚生活」と「妻の正体」

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相談相手になってくれた同僚の女性

 矩之さんは、そういったことを少し年上の同僚女性である慶子さんにときどき愚痴っていた。彼女は離婚してシングルで娘を育てている。すでに子どもは大学生となっていたから、彼女の経験話は彼の心に刺さることが多かった。同業他社に勤めていた優美香さんのことも知っていたので、話しやすかった。

「慶子さんはひとりで苦労しながら育てたようで、娘さんにも会ったことがあるんですが、すごくいい距離感で母子関係を築いている。妻のことを愚痴って、どうして妻にとって無価値である僕と結婚したんだろうと言ったら、『一般論だけど、そういうときって女性には別れたい人がいることってよくあるわよ』って。ハッとしました。そうだったのか、と。そういえば優美香には不倫の噂があったんです。僕は気にしていなかったけど、あれは噂ではなかったのかもしれない」

 そして1年半前、妻は子どもを連れて突然、家を出て行った。その後、離婚調停が申し立てられて現在に至る。原因は「夫の浮気」だと主張。つまり、矩之さんが浮気しているというのだ。

「どんな探偵を雇ったのかわかりませんが、僕と慶子さんがホテル街を歩いているところとか一緒に食事をしているところなどの写真がありました。ホテル街は歩いて抜けただけ、食事はときどきしていたけど、不倫関係はまったくありません。でも調停員は、妻の言い分を信じ込んでいる。妻の弁護士がまた、いろいろな手を繰り出してくるんですよ」

 離婚するのはかまわないが、自分が不倫をしているわけではないことだけは証明したい。彼はそう強く願って、自分を信じてくれる弁護士を立てた。妻の狙いが何なのかはよくわからない。ただ、親の手前、夫に非があるから別れることにしたいのかもしれない。

「ときどき娘から連絡が来るんです。娘は僕を信じてくれていると思う。ただ、妻は母親ともども娘に僕の悪口を吹き込んでいる。娘が毒されるのではないかと心配なんです」

妻の本心は…

 妻の本心はどこにあるのか、いったいなぜ離婚を唐突に言いだしたのか。矩之さんは慶子さんにその話をした。すると慶子さんが衝撃的な話をつい先日、伝えてくれた。

「妻が独身時代つきあっていた不倫相手、とうとう離婚したらしいんです。それで妻は僕と離婚を考えたのかもしれません。ということは結婚している間も、妻とその男は関係が続いていたのかもしれない。僕の友人関係を不倫だと訴えておいて、実際は自分が不倫していた、そしてその男と一緒になりたいから離婚を申し出た。それが妥当な線だと思います」

 調停はうまくいかず、そろそろ裁判が始まると彼は言った。彼の弁護士は親権はとれると言っているそうだ。

 離婚については、大人同士だから冷静に進めればいい話。そこに子どもを巻き込むなと言いたいんですと彼の声が大きくなった。夫婦関係に子どもを巻き込むとどうなるか、彼がいちばんよくわかっているからだ。

 後日、彼から連絡があった。娘が自分の意志で「おとうさんと一緒にいたい」と言ってくれたそうだ。結審はまだだが、おそらく遠からず、娘とふたりで暮らせる日が来ると思うと言った彼の声は弾んでいた。

前編【だから母は僕にベッタリだったのか…両親の“秘め事”を盗み聞きして知った、彼らの複雑な関係性】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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