身に覚えはないのに…「浮気をされた」と離婚調停 41歳夫が語る、最初から不可解だった「結婚生活」と「妻の正体」

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夜の営みを拒否する妻

 娘が産まれてから3ヶ月ほどたったころ、矩之さんは優美香さんをベッドに誘った。ところが優美香さんは拒絶した。

「私がどれだけ疲れているのかわかってるの、と冷たい口調で言われて、妻への気持ちが急速に萎えていきました。こっちこそ、きみのためにどれだけ尽くしていると思ってるんだよと売り言葉に買い言葉で……。そのとき、中学生のあの晩のことを思い出したんです。父が母に無理強いしたことを。だけど僕にはできなかった。嫌がっている女性をどうこうしようなんて絶対にできない。僕は気持ちも体も萎えるだけでした」

 その日から、矩之さんと妻との間に大きな暗い河が横たわるようになった。だが彼はそれに気づかないふりをした。そして時間を見つけては、娘のめんどうをみたり家事をすることに変わりはなかった。

「娘は小さいころから僕の作るオムライスが大好きだった。娘がおいしく食べられるものをいろいろ考え出しました。野菜を小さく刻んで混ぜ込んだミートボールは週に1度は作ってと迫られたので、あるとき作って冷凍にしておいたんです。そうすれば食べたいときにそのままトマトで煮込めばいい。でも数週間後、それがゴミとして捨てられていた。妻が捨てたんでしょう。どういうことなのと冷静に尋ねました。妻は冷凍期間が長くなったから、と。妻のプライドがどこから来ているのかよくわからなかったけど、とにかく僕が家の中をマネジメントしているような感じが嫌だったんでしょう。娘が僕に懐いているのも許せなかったのかもしれない」

 それと同時に、妻の親がときどき家に来ているのもわかった。あるとき忙しいさなか、急に仕事がキャンセルとなった。久々に早く帰ってみると、玄関に女性ものの見慣れない靴があった。リビングからは妻の聞いたこともないような笑い声が聞こえてくる。

「妻の母が来ていたんです。一瞬、もう一度ドアを閉めて外に出ようかなと思いました。するとリビングから娘が出てきた。僕の顔を見て顔を輝かせたので手招きして、『どうしたの』と聞くと『自分の部屋に行く。おばあちゃんがうるさいから』と。じゃあ、パパと一緒に何か食べに行こうかと言ったら、娘は大喜び。その場で連れ出して、妻にはLINEで知らせました。ふたりで何か食べて帰るから、と」

どうして結婚したんだ?

 娘は、祖母がときどき来ていること、来るとお鮨をとるなど贅沢をしていることなどを教えてくれた。ママはよくおばあちゃんからお金をもらってるよ、でもおばあちゃんはパパの悪口を言うから嫌なの、と娘は暗い顔をした。そういうときはママもはしゃいで、パパのことを悪く言ってる、と。

「妻が働かないのは親から小遣いをもらっているからだとわかりました。小遣いという程度ではすまない額かもしれません。僕は妻に恨まれるようなことをした覚えはない。むしろ一緒に家庭を作っていこうとがんばっていたのに」

 矩之さんがあれこれ考えていると、小学校に入ったばかりの娘が「私、男の子のほうがよかった?」とつぶやいた。どういうことかと聞くと、「おばあちゃんは、あんたが男の子ならさっさと離婚できたのにねってママに言った」のだという。

「それを聞いてさすがに腹が立ちました。子どもが聞いてどう思うかを考えもせず、無配慮な言葉を並べ立てるなんて。妻の親は僕との結婚にはやはり反対だった、でも妊娠してしまったものはしかたがない、だけど産まれた子が女の子でがっかりしている。そういうことですよ。薄々わかっていたけど、だったらどうして結婚したんだろうと疑問を覚えました」

 結婚当初から、いや、それ以前から優美香さんからの愛情を感じたことはほとんどなかった。そもそも自分は愛情の感度が低すぎるんですと矩之さんは言った。母親の愛情のかけかたが歪んでいたから、愛情を感知するセンサーも歪んでいたのかもしれない。

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