岩田剛典、井浦新、板谷由夏、本田翼などなど…ドラマで掛け持ち出演する俳優が急増しているのはなぜか

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

大手事務所も方針転換

 きりがないので後はドラマのタイトルは省略させていただくが、仲野太賀と矢本悠馬も掛け持ち中だ。

「あまりに掛け持ちが目立つので、かなり混乱しました。純粋に視聴者の感覚でドラマを見ましたが、やはり違和感はあります。『他にも役者さんはいるよね!?』とテレビの画面に向かってツッコんだこともありました。一昔前のテレビ業界では同じクールで掛け持ち出演なんてもってのほか、タブー中のタブーでした。NHKの朝ドラや大河に出演したら、放送中は他のテレビ局はドラマだろうがバラエティだろうが出演は一切の御法度、CMもあり得ないという“自主規制”が当然でした。民放のドラマでも出演することが決まれば、出演作の前と後のクールはドラマに出演しないという不文律があったのです」(同・プロデューサー)

 ところが、この10年ぐらいで掛け持ち出演が徐々に増えるようになり、さらに最近になって急速に目立っているようだ。

「今でも不文律を守ろうとする役者さん、プロダクションは存在します。一方、研音や東宝芸能を筆頭に、大手の芸能事務所ほど『仕事が来れば断らない』という傾向を強めています。何しろ会社として利益を上げなければなりません。大手ですから社員も多く、マネージャーや経理、総務担当にもメシを食わせなければなりません。とはいえ、それだけで掛け持ち出演が急増している理由は説明できないと思います。最大の原因は、ドラマの制作本数が増えすぎたことでしょう」(同・プロデューサー)

粗製濫造

 最大の原因は「ドラマの数が増えすぎた」から──放送作家で日本大学藝術学部放送学科の教授である小林偉氏の指摘によると、2003年10月クールでドラマの放送枠は21だったのに対し、昨年10月クールでは39とほぼ倍増したという。(註)

「ゴールデンタイム・プライム帯だけでも、テレ朝が火曜の午後9時と日曜の午後10時、フジテレビが水曜の午後10時と金曜の午後9時、少し前になりますが日テレが日曜の午後10時半にテレビドラマの放送枠を新設しました。今や地上波のリアルタイム視聴率は右肩下がりが鮮明で、テレビ局の営業部門は青息吐息です。こうなるとネット配信やDVDの売上で稼ぐしかなく、ドラマに目が向くことになります。同じ制作費でも、バラエティ番組が放送後に稼げるチャンスは少ないですが、ドラマだと可能性が見込める。こういう経営判断から、ドラマの製作本数が増えているのです」(同・プロデューサー)

 このビジネスモデルで成功したのがテレビ東京だ。「孤独のグルメ」(2012年〜)を筆頭に、「きのう何食べた?」(2019年・23年)、「サ道」(2019年・21年)、「ゆるキャン△」(2020年・21年)などを立て続けにヒットさせ、ライバル民放キー局の羨望の的となった。

次ページ:飽きてきた視聴者

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。