「コロナ対策システムで50億円の血税をドブに」 韓国、中国にも完敗の日本は「デジタル・バカ」

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デジタル競争力ランキングで日本は32位

 その後、政権が代わるたびに新しいIT戦略が打ち出され、似たようなお祭り騒ぎが繰り返され、血税が使われてきました。

 第2次安倍政権では「世界最先端IT国家創造宣言」、岸田政権では「デジタル田園都市国家構想」など大風呂敷を広げまくってきました。

 広げる風呂敷が大きくなればなるほど、どんどんデジタル・ガラパゴス化していき、23年の「世界デジタル競争力ランキング」では、スウェーデンが世界第7位なのに対し、日本はなんと32位。ちなみに、韓国が6位、中国が19位。

 日本政府はIT戦略を実現するために、国民の理解を得るどころか、そもそもDXがどういうものか知らしめることさえもしてこなかった。

 マイナカードを例にとれば、DXを理解してもらってカードを持たせるのではなく、「最大2万円分のマイナポイント」で釣ってDXを進めるという、国の政策としては下の下の策を取ったことで、カードは持ったけど使わないという人がますます増えました。これでは国民の理解も信頼もあったものではありません。

「なんちゃってDX」

 それなのに、いまだに「世界トップクラスのデジタル国家を目指す」などと言っているのですから、妄想にもほどがある! 21年にスタートしたデジタル庁については、日本経済新聞が「会議が多すぎる。もう出たくない」「同じような書類を何度も作っている」などの不満が爆発し、職員が10人近く一斉に退職したと報じています。

 しかも、日本のデジタル化の総本山であるはずのデジタル庁が旗を振った「GビズID」(一つのID・パスワードでさまざまな法人向け行政サービスにログインできるサービス)が、システムの不具合で個人情報を漏えいするなどというあり得ないトラブルを引き起こしています。

「DX」そのものを批判するつもりは毛頭ありません。けれど、日本政府が「DX」と言って、国民に無理やりマイナンバーカードを持たせ、血税を使ってやろうとしていることは、「なんちゃってDX」でしかない。DXに関する「環境整備」や「国民の理解」といった土台のないところに、妄想でデジタル国家をつくり上げているだけ。

 まさに砂上の楼閣という気がするのは、私だけでしょうか。

荻原博子(おぎわらひろこ)
経済ジャーナリスト。1954年、長野県生まれ。明治大学卒業後、経済事務所勤務を経てフリーの経済ジャーナリストとして独立。家計経済のパイオニアとして活躍。報道番組、情報番組などに多数出演している。『老後の心配はおやめなさい』(新潮新書)など著書多数。近著に『知らないと一生バカを見るマイナカードの大問題』がある。

週刊新潮 2024年5月16日号掲載

特集「『コロナ対策』DXシステムは税金のムダ 『マイナ保険証』はとにかく不便 日本政府は『デジタル・バカ』」より

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