「コロナ対策システムで50億円の血税をドブに」 韓国、中国にも完敗の日本は「デジタル・バカ」
“ハーシス地獄”
そうした不信感からか、普及率は3割にとどまり、感染対策として有効に機能するといわれる、目標の6割には遠く及ばなかった。最終的には廃止されて、13億円の無駄遣いとなりました。
役に立たないならまだマシ。コロナで疲弊している医療現場の医者たちをさらに苦しめるという実害すら生み出したのが、先述の「ハーシス」でした。
「ハーシス」とは、新型コロナ感染者や濃厚接触者の情報を集約し、保健所・自治体・医療機関などで共有するためのシステム。
2020年にスタートしましたが、患者1人の情報入力項目が120から130あり、入力だけで1人30分ほどかかる超大変な代物だったのです。
全国保険医団体連合会の会長で、自身も現役の医者として多くのコロナ患者を診てきた竹田智雄先生は、今でもゾッとすると言います。
「コロナ患者の診療が終わり、診た患者の記録をハーシスに打ち込み終えると、すでに夜が明けている。そこで眠る間も無くまた患者を診るという繰り返し。何度も死ぬかと思いました。まさに、“ハーシス地獄”です」
保健所がパンク
疲弊したのは、医者だけではありません。
医師たちが入力しきれない情報をファックスなどで保健所に送ったため、保健所もパンク状態に。
22年7月28日に、東京都は新規感染者を4万406人と発表しました。都の1日の感染者が4万人を突破したのは初めてで大きなニュースとなりました。その前日は2万9036人でしたから爆発的に患者が増えたことになります。が、その原因を調べたら、ハーシスが不具合を起こし、報告に遅れが出た影響もあることが分かったというお粗末な顛末。
コロナ禍の中で医師や保健所を苦しめた「ハーシス」ですが、現場から吸い上げた大量の情報がどう有効に活用できたのかは、いまだに不明なままです。
50億円もの血税をドブに
驚くことに、コロナ禍の前から厚生労働省は、「症例情報迅速集積システム(FFHS)」という「ハーシス」と同じようなシステムを研究・開発していました。
09年の新型インフルエンザの大流行で、感染した患者の情報を素早く把握できなかった教訓から、厚労省内の研究班が13年から開発に着手したシステムです。
なんとこれだと、「ハーシス」で1人30分かかる患者情報の入力が、1分で完了する。7年かけて自治体と意見交換しながら工夫に工夫を重ねて改良した結果、短時間での情報収集が可能になっていたのです。
ところが、こんな素晴らしいシステムがあったことを、「ハーシス」の開発を主導した当時の橋本岳・厚労副大臣は知らなかったそうで、「FFHSに必要な機能が備わっていると担当から説明を受けていれば、採用していたかもしれない」と取材に答えていました。
7年もかけて準備し、すぐ使えて便利な「FFHS」があるのに、わざわざ「ハーシス」を立ち上げて医者を疲労困憊(こんぱい)させ、50億円もの血税をドブに捨てた。
しかも、誰も原因を究明しないし責任も取らない。
これが、今の政府による「デジタル化」の現状です。
ちなみに、北海道だけはこの「FFHS」に目をつけ、21年8月から使い始め、データをもとにクラスターが起きた地域へ医師を派遣するなど、大きな成果を得たようです。
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