「50年には若年女性が6人にまで減少」 消滅可能性自治体で首位となった群馬県南牧村、村長にビジョンを聞くと

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 下仁田ネギで知られる群馬県下仁田町の駅前からコミュニティーバスで揺られること約20分、四方を山に囲まれた緑豊かな集落が同県の南牧村(なんもくむら)だ。

 人口約1300人のこの村が、日本中の注目を浴びたのは10年前のこと。民間シンクタンクの日本創生会議から「将来、最も消滅可能性が高い都市(市区町村)」として挙げられたのである。そして、経済人や研究者らで構成された「人口戦略会議」(三村明夫・日本製鉄名誉会長が座長)が今年4月24日に発表した分析結果においても、同村は「若年女性人口減少率」で全国トップになった。

若年女性が50年には6人に

 全国紙経済部のデスクが言う。

「若年女性人口減少率とは20~39歳の女性が、2020年から30年間でどのぐらい減るのかを予想したものです。若年女性が減少するということは、将来の出生数も減ることを意味する。会議ではこの割合が50%以上だと“消滅可能性自治体”としています」

 消滅可能性自治体とされたのは実に744。中でも南牧村の若年女性人口減少率は88%。20年時点で50人いる若年女性が50年には6人にまで減ってしまうと予想されている。いったい、どんな村なのだろうか。

コンビニもなければ飲み屋もない

 村長の長谷川最定(さいじょう)氏に聞いてみた。

「来てみれば分かりますが、村にはコンビニもなければ飲み屋もありません。何よりも若い人が働ける会社(あるいは工場)がないのです。おまけに高校がないから中学校を卒業すると出て行ってしまう。自治体を再編する“平成の大合併”では下仁田町との統合を模索しましたが、向こうから断ってきました」

 何も対策を取っていないわけではない。

「以前は村で一番大きな職場が村役場でした(約50人)が、NPOを立ち上げて道の駅や老人ホームを誘致。それが、やっと60人規模の組織になってきたところです。しかし、南牧村は高齢化率でも全国トップで毎年7~8人のお年寄りが亡くなる。一方で新しく生まれる子供は2~3人。人口の激減をカバーできていません」(同)

 億ションが林立する都心や、半導体工場の進出でにぎわう町とは別の世界がここにある。そして、南牧村の抱える悩みは、日本中で起きている悩みでもある。

週刊新潮 2024年5月16日号掲載

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