日本ハム時代の「落合博満」も被害に…球場で“蜂”に刺されたプロ野球選手たち

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「問題ない。虫とは関係ない」

 近年では、昨季までDeNAでプレーしたリリーフ左腕・エスコバーも、蜂騒動に巻き込まれている。

 2021年6月9日にメットライフドーム(現・ベルーナドーム)で行われた西武戦、エスコバーは試合前のウォーミングアップ中に、大事な左腕を蜂に刺されてしまう。蒸し暑いドーム内で、半袖のアンダーシャツを着ていたことがアダとなったようだ。

 ナインから手渡された虫よけグッズをズボンのベルトに引っかけたエスコバーはいったんベンチに戻ると、念には念を入れて、長袖のアンダーシャツに着替えて再びグラウンドへ。刺された箇所をチームメイトに笑顔で披露するなど、それほど意に介していない様子だったが、本番の試合では、一転精彩を欠いた。

 2点リードの7回、リリーフとしてマウンドに上がったエスコバーは、先頭の森友哉にいきなり四球を与え、2死二塁からメヒア、呉念庭の連続タイムリーで同点に追いつかれてしまう。勝利の方程式が崩れた結果、試合も8対8の引き分けに終わった。

 だが、三浦大輔監督は「問題ない。虫とは関係ない」と蜂に刺された影響を否定した。2019年に74試合に登板した鉄腕も、6月に入り、5試合中3試合で失点と本来の投球が見られず、「疲れが出てきているのは確か」(三浦監督)。そんな矢先に蜂に刺されたのだから、まさに“泣きっ面に蜂”だった。

災い転じて福となす

 最後は蜂に刺されたことがきっかけで、難病にかかっていることが判明した選手を紹介する。

 昨年、ドラフト6位で中日入りした田中幹也は、亜細亜大時代の2021年夏、北海道合宿中にスズメバチに刺されるアクシデントに見舞われた。

 さらに病院で血液検査を受けたところ、蜂とは無関係の数値に異常が見られ、その後、難病の潰瘍性大腸炎であることが判明した。投薬治療が効かなかったため、秋のリーグ戦には2試合しか出場できず、10月に大腸を全摘出する手術を受け、3ヵ月入院。もともと166センチ、68キロと野球選手としては小柄なのに、体重が10キロ以上減るなど、辛い闘病生活を送ったが、「この病気で苦しむ方に、勇気を与えられる選手に」と決意し、4年時に見事復活を遂げた。

 もし、スズメバチに刺されていなかったら、難病の発見も遅れていた可能性もあっただけに、災い転じて福となすと言うこともできるかもしれない。
 
 今季は“忍者”の異名をとる走力と守備力を売りに、主に2番打者として活躍中。2年目ながら度会隆輝(DeNA)らとともに新人王の有力候補に挙げられている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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