“元祖モバイルQB”マイケル・ヴィックの波乱万丈 「犬をつるして処刑」の衝撃からプロボウル復活まで(小林信也)

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「嫌いな選手」第1位

 アメリカ社会は、動物虐待に対して厳しい。だが、更生にも寛容な側面を併せ持っている。刑期を終え、闘犬撲滅運動への協力を約束したヴィックは2年後に出場停止を解かれ、フィラデルフィア・イーグルスと2年契約を交わした。

 2年目の10年には12試合に先発。トップ・コンディションを再現し、キャリアハイとなる3018ヤードゲイン、パスTD21回を記録。地区優勝に貢献し、カムバック賞を獲得した。

 ヴィックは11年、ニールセンが行った調査で「アメリカで最も嫌いなスポーツ選手」第1位に選ばれた。一方でヴィックの復帰を歓迎し、支援する声も多かった。実際、10年のシーズン最後を飾るプロボウル(オールスター戦)に投票で選ばれ、出場を果たした。

 近年は、ラマー・ジャクソン(ボルティモア・レイブンズ)という新たなモバイルQBが台頭し、19年にはランで1206ヤードゲインの記録を達成したが、ヴィックの1039ヤードはいまだにQBで歴代2位にさんぜんと輝いている。

小林信也(こばやしのぶや)
スポーツライター。1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

週刊新潮 2024年5月16日号掲載

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