「いちゃいちゃ用の音楽」という評価は不満だった…世界的サックス奏者のデイヴィッド・サンボーン【追悼】
CDラックに並んでいたのは
そんなおり、サンボーンの自宅を訪れる機会に恵まれた。インタビューのオファーをしたら、当時マンハッタンのセントラル・パーク西にあった家に来てほしいといわれた。最上階は彼のプライベート・スタジオ。ソファの横にはCDラックがあった。サンボーンがどんな音楽を聴いているのかを知りたくて、ラックの中身を見せてもらった。
そこに並んでいたのは、マイルス・デイヴィスのアルバムがずらり。あとは、デューク・エリントン。1950年代から1980年代くらいまでのジャズの名盤がそろっていた。
「インストゥルメンタルのジャズは、演奏を通してストーリーを語る。でも、それはけっして具体的な物語ではない。僕の演奏する音楽にはほとんどの場合、歌がないからね。サックスは音を通してフィーリングを伝えるというか、抽象的な物語を語る。すると、リスナー1人1人が自由に解釈して、その人だけの物語を描くことができる。だからこそ、ジャズはユニバーサルな音楽になれるんだ。僕が好きなのはジャズだよ」
そのときはジャズへの思いをはっきりと語っていた。
サンボーンはこの世を去った。今、多くのリスナーは悲しみ、ジャズやロックのアーティストたちはサンボーンとともに演奏できない喪失感を味わっている。
[3/3ページ]