巨人、築地新球場は屋根付き人工芝、開閉式で天然芝じゃないの? 専門家は「経営側がどちらを向いているかということ」
MLBでもドーム球場が流行った
本当に天然芝は不可能なのだろうか。MLB研究家の友成那智氏に聞いた。
「12球団ある日本のプロ野球の本拠地球場で天然芝を採用しているのは、阪神甲子園球場と宮城球場(楽天モバイルパーク宮城)、広島市民球場(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)、そして北海道日ハムファイターズのエスコンフィールドHOKKAIDOの4つのみ。一方、30球団ある米メジャー(MLB)の本拠地球団で“人工芝”を採用しているのは、わずか5つ。割合としては真逆と言っていい状況です。日本のプロ野球はよくMLBのマネをしますが、これだけはマネをしません 」
なぜこれほど違うのだろう。
「MLBでもかつては屋根が開かないドーム型球場が流行った時期がありました。ところが、いずれも不人気でした。開放感はありませんし、やはり天然芝のほうが綺麗ですからね。ファンは青空の中を飛んで行くボールを見たいわけですよ。天然芝はボールの勢いを殺すので、野手の動きも見応えがあります。そして何より、選手にとっては堅い人工芝よりも体への負担が少ない。そのためMLBでは次々と屋根を外して天然芝に変えていきました。そうすることで観客も増えていったのです」(友成氏)
日本ではなぜそうならないのだろう。
経営側はどちらを向いているか
「天然芝は専門のグラウンドキーパーがいなければいけませんし、コストもかかりますからね。シカゴ・ホワイトソックスには3代続く優秀なグラウンドキーパーがいます。井口資仁さんがホワイトソックス時代、そのグラウンドキーパーのアドバイスを聞いたらピタリと当たったと語ったことがありましたが、対戦相手に合わせて芝の長さを変えることもメジャーではよくある。そこがまたファンにはたまらない魅力になっています」(友成氏)
もっとも、人工芝でもコストをケチると酷いことになりかねない。
「神宮球場はヤクルトの本拠地のみならず大学野球や高校野球の東京大会にも使用されます。元ヤクルトの内野手・宮本慎也さんは『人工芝なのにハゲてるからイレギュラーして困った』と言っていました。一方、昨年から日ハムの本拠地になったエスコンフィールドは、北海道にありながら開閉式の屋根で天然芝を採用して人気になっています。今は寒さに強い芝も、暑さに強い芝もあります。やってできないことはないはずです」(友成氏)
それには経営側の考えが重要という。
「経営者がどちらを向いているかということもあるでしょうね。野球ファンなのか、営業成績、つまりお金儲けなのか。MLBのオーナーには、人工芝は絶対に避けたいという人が少なくありません。ボストン・レッドソックスのオーナーであるジョン・ヘンリー氏はもともとヘッジファンドや先物取引で儲けた人として蔑まされたこともありましたが、オーナーになってからは人が変わったように球団やMLBの経営改善に取り組みました。テレビの放映権料を30球団で分配するなどして、今ではすっかりスポーツ企業家として名士となっています」(友成氏)
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