46イニングで防御率は驚異の0・96…サイヤング賞候補「今永昇太」ファンが熱狂する背景に「巨人の名投手と同じ直球」「魅せる投球」

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ポイントはフォーシーム

「昨シーズン、山本投手は16勝6敗、防御率は1・21でした。一方の今永投手は7勝4敗で防御率は2・80という結果で、“相手打線を完膚なきまでに沈黙させてしまう”というタイプの投手とは思われていませんでした。日本プロ野球における通算成績を見ても8年間で64勝50敗、防御率は3・18という数字です」(同・記者)

 日本を代表するエースと言えば山本由伸のほうだった。だからこそドジャースは12年総額3億2500万ドル(約500億円)の契約を結んだのだ。一方の今永は4年総額5300万ドル(約81億円)と報じられた。

 今永も「日本選手渡米時における歴代5位の大型契約」だったとはいえ、山本に比べると見劣りしたことは事実だ。ところが今は、その山本より今永のほうが大活躍しているのだから、やはり野球は奥が深い。

 MLB研究家の友成那智氏は「今永のピッチングは、アメリカのスポーツメディアも『素晴らしい』と大きく取り上げています」と言う。

「率直に言って、オープン戦での今永投手は最終戦を4失点で負け投手になるなど、一部のスポーツメディアからは不安視する声が出ていました。これほどの大活躍を予想できた関係者は皆無だったのではないでしょうか。ポイントは開幕直前にフォーシームのキレが抜群になったことです。データを見ると、今永投手のフォーシームの被打率は現時点で1割8分4厘という桁違いの数字になっています。要するにどんなバッターでも今永投手のフォーシームはなかなか打てないとデータに表れているわけです」

傑出した回転数

 今永の自己最速は154キロ。試合では140キロ台の後半という球速も全く珍しくない。決して早いボールではないはずなのに、相手打線から三振の山を築くのだ。

「特に素晴らしかったのが5月14日のブレーブス戦です。ブレーブスはMLBでも屈指の最強打線と言われているにもかかわらず、5イニングを0点に抑えました。ポイントは球の回転数です。アメリカの専門サイトでは2438回転と紹介されており、平均が2300回転ですから、今永投手の回転数はバケモノというレベルです。これほどの回転数だと、バッターは向かってくるボールが浮きあがってくるように見えるはずです」(同・友成氏)

 剛速球はボールが浮きあがって見えるとよく言われるが、これは物理学的にはあり得ないことが証明されている。とはいえ目の錯覚が生じてしまうため、どうしてもそう見えるのだという。対戦バッターが「ボールが浮きあがる」と口を揃えたことで有名なのは、巨人のエースだった江川卓氏のストレートだ。

「今永投手のボールも、江川さんのボールとほぼ同じでしょう。今永投手は勝負球で、140キロ台のストレートを、おまけに高目へ投げることがあります。誰もが『ホームランを打たれる!』と思った瞬間、バッターは空振り三振しているのです。今永投手のボールは回転数が凄まじいため、対戦相手はボールが浮きあがったと錯覚してしまい、三振してしまうのです。たとえバッターが辛うじてバットに当てたとしても凡フライでアウトです。強烈なバックスピンがかかっていますから、当たっても簡単には飛びません」(同・友成氏)

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