円安・物価高で注目の「LCC」、実際に乗って分かったメリット・デメリット 手荷物に“追加料金”、乗り継ぎで再び“出国手続き”というケースも

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搭乗前にもトラップが

 そこから再び手荷物検査と出国手続きをし、乗り継ぎ便の搭乗口にようやく行けることになるのだ。通常のエアラインと比べるととんでもなく手間と時間がかかる。さらに、夫が言うのは精神的な悪影響だ。

「初めて訪れる空港だとテンパるんだよね。何しろどこに何があるか分からないから迷うし、入国手続きと出国手続きで大行列があると、乗り継ぎ便に間に合わないのでは、とドキドキしてしまう。乗り継ぐ場合はいっそのこと翌日にしてしまうってのも手かもしれない」

 となると、タクシーの往復移動代とホテル代が一泊分かかるわけで、こうなると安いんだか高いんだかよく分からなくなる。

 さて、彼の妻がなぜLCCがイヤなのかというと、「とにかく席が狭いから」だという。LCCは「3席×2」の場合が多いが、通常の航空機のジャンボ便の場合は「3・4・3」で、席の幅はLCCよりも広い。

 それでも、一度くらいは乗っても良いかな、と最前列の脚を伸ばせる席に夫と一緒にアップグレードしてみた。この時は「フットレスト(脚置き)」を準備していたのだが、これは前列の席の背についたテーブルにひっかけるもの。だが、なまじっか広い席にしてしまったため、ひっかける場所がなく、使うことができなかった。脚がキツいため、シートベルトサインが消えた後、妻は床に座って椅子に腕と顔を乗せて寝たのだという。

とにかく寒い機内

 さらに、飛行機に乗る前もトラップがある。何しろ突然、搭乗口が変わってしまうことがあるのだ。待合室で会話に没頭していたら周囲の人々が一斉に立ち上がり動き始める。一瞬、何があったか分からない状態に陥るが、ガラリとなった待合室に「〇〇便は13番搭乗口から6番搭乗口に変更になりました」なんてアナウンスが鳴り響く。そして、新しい搭乗口は直接タラップ経由で飛行機に乗れるわけではなく、5分ほどバスに乗って飛行機まで行くことになったりもする。

 最後に私の話になるが、とにかくエアアジア機内は寒かった! 上は長袖シャツとジャケットを着ていたが、下は短パン。乾燥した客室内も相まって約5時間後、福岡空港に着いた時はすっかり喉をやられていた。1500円を払ってブランケット・ネックピロー・アイマスクのセットを買っておくのだった……と後悔したのである。

 このようにLCCの旅はサービスを削ぎ落とし、多少の不便に甘んじる客を対象に安く移動手段を提供しているわけだ。だから「サービスが悪い!」などとネットのクチコミサイトに書いたりするのはいかがなものか、とも思う。客は割り切って利用すべきタイプの航空会社なのである。定時に運行し、追加料金が取られなかったら大満足、といったぐらいの期待値で丁度良い。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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