映画「碁盤斬り」白石和彌監督が語る「草彅剛」 「裏表のない生き方をしていますよね」

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時代劇はファンタジー

――どうして時代劇を撮ろうと思われたのですか?

「まず、もともと時代劇が好きだったんですよ。監督になる前から『切腹』(1962年)など小林正樹監督の作品や黒澤明監督の作品をよく観ていました。監督になった以上、いつか自分もチャレンジしたいって思ってたんです」

――時代劇の魅力とは?

「ある種、ファンタジーなんですよね。人情とかが表しやすい」

――確かに、現代劇では描けない世界が時代劇にはあります。撮影で苦労された点はありますか?

「ロケが出来る場所が少ないんですよ。昔の建物がもう日本中どこ探してもほぼないし、残っているところも観光地化しちゃっていますから」

――撮影開始前に一苦労ですね。

「ええ。ただ、そういうしがらみもアイディアを出しやすい土壌につながるんです。あと、当時の人たちの暮らしぶりや武士の精神性について調べていく行為も作品をつくっていく礎になる。作品づくりにおいては、普段より考えることが増えるということが、実は重要なんです」

――監督自身が初めての時代劇の演出面で戸惑われたことは?

「最初は『うまく出来るかな』と身構えたところもありますが、やり始めると、京都撮影所の美術さんや床山さんらスタッフがプロなので、むしろ時代劇であることを感じさせずに演出させてくれました。いい意味で、いつもと変わらなかった。一方で『やっぱり時代劇いいなぁー』と感じましたね」

――撮影所のスタッフは草彅さんに対しても助言してくれたのですか?

「ええ。最初だけですが。僕に対し『草彅さんはもうちょっと、こうしたほうが侍っぽく見えるんちゃいますか』と言ってくれたり、あるいは『もう少しアゴを引いたほうが清廉に見えますよね』と進言してくれたり。それを本人に伝えると、いつの間にか自分のものにするんです」

小学生が1人で観に行ける映画は初めて

――國村隼さん(68)市村正親さん(75)、中川大志さん(25)、斎藤工さん(42)、小泉今日子さん(58)ら共演陣も多彩で豪華。中でも草彅さんの娘・お絹を演じた清原さんはどうでした?

「素晴らしい俳優だと思いました。今回は凛とした感じがあるところがとくに良かったですね。目の力と姿勢の良さもあって、誇り高く生きている格之進の娘らしさを出してくれました」

――大勢の人に観てもらいたい?

「ええ。10年以上、映画を撮っていますが、レイティング(年齢制限)が初めて『G(ゼネラル=全年齢)』ですので(笑)」

――意識したことがありませんでした……。確かに「孤狼の血 LEVEL2」は2022年の日本アカデミー賞で12部門13賞を獲得したものの、ヤクザが出てくるのでR15。西島秀俊さん(53)が主演した配信ドラマ「仮面ライダーBLACK SUN」(2022年)も格闘シーンがリアルなので、R18でした。

「Gをつくったことない監督が、よくやってこれたなって自分で思います(笑)。今回は初めて小学生も1人で観に行ける映画なので、大勢の方に観ていただきたいですね」

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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