AI審判導入の韓国プロ野球で発生した誤審騒動のてん末 日本は将来、どうする?

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「ボールって聞こえたと言えよ」

 カン監督は「5球目の投球がストライクなのだから、3ボール2ストライクではなく、三振成立ではないか」と抗議した。3球目から計3球が投じられるまでの数分間、iPadと球場のスコアボードに表示されていたカウントが異なっていた点にはサムスン側も気付いていた。審判団が集まり、事態を収拾しようとしたものの、その会話が中継に流れてしまった。

「ボールって聞こえたと言えよ」

「そうしよう」

 このやり取りはインターネットでも拡散された。誤判定を隠蔽しようとした証拠音声ともいえる。KBO人事委員会は19日、AI判定を無視した審判らを無給三カ月、審判団の責任者を解雇(契約解除)したが、将来的なAI審判の完全導入に疑問を残した。米メディアの一部もこの一件を伝えた。

「韓国では20年3月から二軍でAI審判を導入しています。MLBは実験導入しているマイナーや独立リーグからも報告を受けていますが、いち早く導入を決めた韓国プロ野球がどんな反応を示すのか、興味を持っていました」(前出・米国人ライター)

 韓国がメジャーリーグに先駆けて導入に踏み切ったのは、「やってみよう」の好奇心が強かったからだそうだが、こんな見方もされている。

「今年3月、韓国・高尺スカイドームでドジャースとパドレスの公式戦が行われました。この韓国遠征の話し合いが始まった21年、韓国側は『米国内でKBOの公式戦ができないか』と聞いてきたんです。MLBが検証を進めているAI審判を先駆けて導入することで米韓の距離感を縮めようとしたのかもしれません」(前出・同)

 韓国で起きたミスジャッジはAIの誤作動ではなく、人為的なミスだ。AIの進化がさらに加速しても、それを操作するのは、あくまで「人」である。

 阪神が首位奪還に成功した12日、才木浩人(25)が完封勝利を挙げた。1対0の投手戦で、その貴重な1点は打者・才木が選んだ四球から生まれている。

「打者投手には投げにくい」「右投手は左打者に投げにくい」など、繊細さを示す投手心理はいろいろあるが、投手と球審の相性もあるという。際どいコースに投じたものの、ストライクとコールされると、勢いもつく。キャッチャーが捕球後の、「ストライク」コールの間合いも、球審それぞれで個性があって面白い。

 やはり、一種の心理戦でもある野球の判定は、AIよりも「人」に任せた方がいいと思うのだが……。

デイリー新潮編集部

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