AI審判導入の韓国プロ野球で発生した誤審騒動のてん末 日本は将来、どうする?

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1試合平均14回のミスジャッジ

 球審のジャッジについて、メジャーリーグでは事情が異なるようだ。19年4月にボストン大学の研究チームが前年のペナントレースの全試合を対象に「ストライクorボール」の球審判断について、コンピューターで解析し直した。その結果、誤ったジャッジがされたのは3万4294回もあったと発表した。「1試合平均で14回、1イニングあたり1.6回」の割合で、「ストライクorボール」のミスジャッジがされている計算だ。

「ミスジャッジが多い審判のランキング表も発表されました。特定の審判が批難されることはありませんでしたが、審判が新人選手に厳しすぎるジャッジをし、『メジャーリーグの洗礼だ』と報じられることも多々あります。米国の場合、ファンは審判と選手が感情的になってぶつかるところも含めて楽しんでいます」(米国人ライター)

 とはいえ、メジャーリーガーや米審判団も、ミスジャッジを望んではいない。誤審をなくし、かつ試合時間の短縮のため、導入が検証されているのが「AI審判」だ。現在、マイナーリーグの一部の試合や、独立リーグで実験的に採用されており、「数年後にはメジャーリーグでも正式導入される」というのが大方の見方だ。

「日本のプロ野球界でも、AIによる自動判定システムの導入は世界的な流れと認識はされています。でも、現場ではすぐにどうこうというわけでもなく、是か非かと聞かれれば、否定的な声の方が多いです」(NPB関係者)

 AIがジャッジしたのであれば、「ボールカウント」だと思って見送った投球がストライクコールされても、選手もファンも感情的にはならないだろう。大多数の人が「AIならばミスジャッジはしない」と思うからだ。しかし、すでに韓国で“事件”は起きてしまった。

 4月14日、韓国プロ野球(KBO)のNCダイノス対サムスンライオンズ戦でのこと。スコアは1対0でNCがリードの中、サムスンが反撃に出た3回裏二死一塁の場面だった。

 NCのイ・ジェハク(33)の投じた5球目がストライクコールされ、カウントは「3ボール2ストライク」となった。その直後、カン・イングォン監督(51)がベンチを飛び出した。

「今シーズンから韓国プロ野球界では、ABS判定(AI審判)が導入されました。AIがストライク・ボールを判定し、球審はイヤホンを通して知らされたジャッジをコールしています。AIのジャッジは、両チームのベンチに置かれたiPadにも表示されています」(現地記者)

 カン監督がベンチを飛び出した理由は、iPadに表示されているAIジャッジと、実際のカウントが異なったからだった。

「問題は2球目。両ベンチのiPadではストライクになっていましたが、球審はボールとコールして試合を進めていたんです」(前出・同)

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