20世紀以降、急増してきた世界の人口が6年後に転換点…少子高齢化で国際社会の地政学リスクが上昇
無縁とみなされているアフリカも…
生産年齢人口(15~64歳)の比率がピークを迎えた昨年は68%だった。ピークの年を個別で見ると、タイは2013年、ベトナムは2014年。人口2億7000万人で域内最大、世界第4位のインドネシアでも、2030年には生産年齢人口比率が低下し始める見通しだ。
東南アジアにおいて、「豊富な労働力が経済を押し上げる」という成功の方程式は既に失効したと言っても過言ではない。東南アジア全体の高齢化率は2019年に節目の7%を超え、「高齢化社会」入りした。そのため、2043年には高齢社会に達する可能性が高い。
中でも深刻なのがタイだ。「2029年に超高齢社会(高齢化率が21%超)になる」との懸念が生じている(3月28日付NNA)。
気になるのは、東南アジアの多くの国々が、シニア層が安心して暮らせる安全網(セーフティーネット)を構築していないことだ。一般的に定年が55歳と早いうえに、公的年金のカバー率は4分の1程度にとどまると言われている。
若年人口が増え続けるアフリカだけは、少子高齢化と無縁だとみなされている。だが今世紀末までに、アフリカ全体の高齢者人口は現在の4600万人から6億9400万人と約15倍に増加する見込みとなっており、各国政府の頭痛の種になりつつある(4月5日付Forbes)。
わずか6年後に人口の流れが変わる
このような状況を裏付けるように、「世界人口のトレンドは近いうちに転換期を迎える」との研究結果が最近公表された。
米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)は3月20日、世界の平均合計特殊出生率は2030年に人口置換水準(置換率 )を下回るとの見解を示した。20世紀以降、急激に増加してきた世界の人口の流れが変わる転換点が、わずか6年後に迫っているのだ。
IHMEはさらに、世界の平均合計特殊出生率は2050年に1.83人、2100年に1.59人にまで低下すると予測している。このことは、今世紀末までに、ほぼすべての国や地域で人口が減少することを意味する。
国連はかつて、20世紀は人口爆発の世紀だったが、21世紀は高齢化の世紀となるとの見方を示したが、その“予言”が正しかったというわけだ。
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