〈新宿・タワマン刺殺事件〉精神科医が指摘する“車は女性の象徴的存在” 「バツイチ」「趣味人」の51歳が“無敵の人”になるまで

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引き金は「二重の喪失体験」

 片田氏が続ける。

「願望を現実と混同してしまうことを、精神医学の用語で『幻想的願望充足』といいます。たとえ周囲から“不釣り合い”と映っても、2人は結ばれ、幸せな生活が待っている――。容疑者はそんな幻想を抱いていたと推察され、さらにはフロイトのいう『惚れこみ』の状態にあった可能性も極めて高い。メディアの取材に応じた容疑者の父親が被害者との結婚の話を聞いた時、“やめといたほうがいい”と注意したにもかかわらず、容疑者は“(平沢さんは)可愛くて素直でいい子なんだよ”と聞く耳を持たなかったと証言しています。恋愛対象を過大評価して理想化し、“あばたもエクボ”と無批判に受け入れる状態を『惚れこみ』と呼びます」

 恋い焦がれる気持ちが執着へと変わり、ついに“暴発”した背景について、片田氏がこう話す。

「犯行の引き金になったのは、車とバイクの売却、そして店への“出禁”措置で被害者まで失う『二重の喪失体験』だったと考えられます。それまでの生活を支えてくれていた愛着対象をすべて失い、暴発を抑制するブレーキがなくなってしまった。被害者の無念は察するに余りあり、容疑者との詳しいやり取りや関係性については今後の捜査の結果を待つほかありません。ただ、もともと容疑者が通っていた店は“疑似恋愛”と割り切って“恋愛遊戯”を楽しむ場だったのではないでしょうか。容疑者が遊び慣れていなかったためか、女性の営業トークの一部を真に受けたり、都合よく解釈したりした可能性は捨てきれず、事件に後味の悪さを残しています」(片田氏)

デイリー新潮編集部

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