「築50年」マンション建て替え「10年奮闘記」 住民が愛着あるマンションの将来を直視せざるを得なくなった“非常事態”とは?
新築マンションの価格高騰が叫ばれて久しい。東京23区では70平方メートルの新築マンションなら1億円超えは当たりまえ。千代田区、中央区、港区のいわゆる「都心3区」においては、中古ですら2億円を超える物件が珍しくない。一方、「都心・駅近」の中古マンションには建設時期が古く老朽化した物件も多く、これから先「建て替え問題」と無縁ではいられないのだという。老朽化する築50年のマンションの“再生”で、6000万円ものキャピタルゲイン(差益)を手にした人物から話を聞いた。
(前後編の前編/後編に続く)
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リーマンショック後の不動産価格が底値の時代
一般的に、マンションの平均寿命は約70年と言われている。これは国土交通省が2013年に発表した資料の中で、鉄筋コンクリート造のマンションが平均して「約68年」で取り壊されるという調査結果を発表したことに由来があるようだ。
管理状態が良ければ100年以上住むことが可能という調査結果もあるが、マンションの造りや耐震構造によっては、もっと早く建て替えが必要になるケースもある。
今後、都心マンションの老朽化が進み、実例も増えるであろうマンションの建て替え。
実際に港区の築50年の一等地マンションに住み、管理組合のメンバーとして、敷地売却と建て替えに関わってきた男性に“先行事例”となりそうな話を聞くことができた。
50代の会社員Yさんは、2008年に港区麻布エリアの一等地に建つ中古マンションを購入。
「当時はリーマンショックの起きた直後で、不動産価格が底値の時代でした。安かったから買ったという訳ではなく、結婚してパートナーと同居する家が必要になったので購入したのですが、まさかここまで都心の不動産が値上がりするとは思いませんでした」(Y氏)
当時、Y氏が購入したマンションは、築年数こそ35年ほど経ってはいたが、駅徒歩5分のまさに一等地。70平方メートル超の2LDKで、購入価格は5000万円弱だった。今では考えられない価格ではあるものの、Yさんにとっては一大決心だった。
「今の基準に照らせば割安なのはその通りですが、5000万円も大金ですからね。その頃は将来的な家族構成も分からなかったので、どれぐらいの期間そこに住むかも特に決めてはいませんでした。ただ、やっぱり都心はなにかと便利だし、麻布界隈の雰囲気も好きで、気が付くと夫婦2人で15年住むことに」(Y氏)
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