【虎に翼】異例の“台詞なし23秒間”演出、寅子の怒りを込めた演説が意味すること

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

「家族」のために受験を断念した華族令嬢の涼子と弁護士夫人の梅子

 残った仲間たちで高等試験に臨もうとしていた矢先、華族令嬢である桜川涼子(桜井ユキ)の父親・桜川侑次郎男爵が、芸者と駆け落ちして失踪してしまう。母親はアルコールに溺れ、涼子が櫻川家を支えるしかない。彼女は櫻川家の存続のために、弁護士の道を捨てる決断をする。「母親」や「家」のために受験を断念し、他の男爵家から婿を迎え結婚する道を選ぶことになった。

 さらに高等試験の筆記試験の当日、同期で最年長の大庭梅子(平岩紙)は著名な弁護士である夫から離婚届を突きつけられる。「息子たちにはもう会えないと思え」。当時の民法では、子どもの親権は父親が持つことになっていた。外で若い女を作っている夫に対し、自分から離婚を切り出し裁判で3人の子どもたちの親権を得るために弁護士資格を得ようと計画していた梅子は、その道を断たれた格好だ。

 子どもたちを夫のような人間にはしたくないと、梅子は三男だけを連れて家を出ることを決意。試験を受験せずに姿を消してしまう。

「寅ちゃんたちならば立派な弁護士になれると信じています。どうか私のような立場の女性たちを守ってあげてください」

 寅子への手紙で梅子が残した言葉だ。口述試験の結果、寅子は女子部の先輩2人と共に合格し日本で初めての女性弁護士になることが決まる。

男装が理由? 口述試験で落とされた山田よね

 一方、共に口述試験を受けた同期の山田よね(土居志央梨)は、手応えを感じていたが、面接で思わぬ指摘に直面していた。“男装姿”を突っ込まれたのだ。

「それで君、弁護士になってもその頓知気な格好は続けるのかね?…」

 苦々しそうにそう語る面接官についカッとなり「頓知気なのはどっちだ。あんたらの偏見をこっちに押しつけるな!」と口答えしてしまう。

 結果、よねは口述試験で不合格だった。寅子の自宅を訪ねた際に、面接でのやりとりを打ち明けた。ぶっきらぼうなよねらしく、別れ際に寅子に「おめでとう」とだけ言い残して去った。

 その後ろ姿を見送る寅子。この台詞なしのシーンは実に23秒間もあった。台詞が多い朝ドラでは異例の長さだ。よねの足音が響く。カラスの鳴き声も聞こえる。女性への壁の厚さをじわじわと視聴者に感じさせる演出だ。そこに波の音が甦ってくる。

 その音に合わせて寅子がつぶやくように歌ったのが『モン・パパ』。

「うちのパパとうちのママが並んだ時・・・(中略)うちのパパ、毎晩遅い。うちのママ、ヒステリー。暴れて怒鳴るはいつもママ。ハゲ頭下げるはいつもパパ。デタラメ言う、それはパパ。胸ぐらをとり、それはママ。パパの身体はゆれる、ゆれる、ゆれる、クルクルと回される・・・」

 ヤンちゃんとの別れの場面が甦る。他にも梅子、涼子、よねの顔も……。歌声に合わせて明律大学の女子部の仲間たちとの思い出がスローモーションで甦る。彼女らが残した「思い」。それを自分が背負っていくのだと決意するような寅子の強い眼差しが映される。

次ページ:寅子がぶつけた怒りの言葉

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。