「健康的に映る“野菜依存症”のワナ」 数々の著名人の食生活を採点してきた管理栄養士が明かす「理想の食卓」

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食の外部化

 のべ1300人を超える著名人に食のアドバイスをしてきたのは管理栄養士の荒牧麻子氏である。連載開始当時、彼女の肩書はダイエットコミュニケーションズ代表だった。

「何のために痩せるのか、高齢者に聞くと、100歳まで生きるとか、長寿に結び付けた答えが返ってくるんですね。だけど、必ずしも長生きじゃなくても、自分がやりたいことをやりながら快適に過ごすためにはどうしたらいいかを考えなければいけないので、まずはおいしく楽しく食べられて、元気ならいいという視点でアドバイスしようと考えました」

 荒牧氏は、90年代に成人病が生活習慣病と呼ばれるようになり、メタボリックシンドロームという言葉が浸透した背景について、日本人の食生活の変化があると指摘する。

「例えば肉類、油脂類の消費、摂取量は緩やかに拡大し、雑穀、米の消費は減少しています。小麦粉を原料とするパスタ、麺類、パンなどの粉食はあまり変化がありませんが、特徴的なのは、食の外部化が進んだことですね。ケイタリング、テイクアウト、デリバリーなど、冷たい弁当から温かい弁当へと食の調達方法がいくつも生まれました」

 他に目立った動きとして、2000年のシドニーオリンピックで、マラソンの高橋尚子選手が優勝したとき、選手の食事管理がクローズアップされたことを挙げる。

「あれでスポーツ栄養の分野が一気に盛り上がり、プロ野球、プロサッカー、マラソン選手などが次々にアドバイザーや料理人を雇用し、アマチュアの間でも食事管理に対する関心が高まりました。自己のパフォーマンスをピークにもっていくための食事を考えるようになったのです」

90点以上の高評価となった有名人は?

 荒牧氏がコラムで著名人の食生活を論評するだけでなく、数字を入れて採点するようになったのは、連載が始まって5年後の第217回からだった。

 採点基準については、「実用的な食生活となっているかどうか、つまり、健康を確かなものとするための暮らし方というか、保健的な暮らし方という流れにどれ程近づいているのか、または離れているのかを見定める」とのこと。

 この基準に従っての採点は、100点満点の評価から辛口の30点台、はては採点不能までと幅広い。

 満点、あるいは90点以上の高評価には、雪村いづみ、内海桂子、有馬稲子、岡田茉莉子、岩下志麻、小山明子、加藤治子、ジュディ・オング、大宅映子、三浦朱門、外山滋比古、金田一春彦、田原総一朗、張本勲、草野仁、小沢昭一、篠沢秀夫らの名前が挙がる。

「登場人物としては男女が半々くらいだと思うのですが、点数がいいのは圧倒的にベテラン女優さんたちですね。それと100歳で現役の方には文句なく満点をつけました」

 ベテラン女優の評価がおしなべて高くなるのは、仕事でさまざまな所へ出かけてさまざまな物を食べた経験から、料理全般に広い知識があり、それを自分のものにした食事を取っているからだと、荒牧氏はみる。

「若い女性タレントさんたちは、まだ発展途上です。体調が心配になるほど少食な方もおられましたし」

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