「虎に翼」に政治色を感じるという意外な声 会長交代でNHKと民放ドラマの違いも鮮明に

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ドラマの自由度は昭和期より狭まっているのか

 時は流れて2022年、長澤まさみ(36)が主演した「エルピス ―希望、あるいは災い―」(フジ系・制作は関西テレビ)が話題になった。秀作だったと思う一方で、「ギリギリまで攻めている」と評する声が上がったのには違和感を抱いた。

 このドラマは冤罪の構図、政治家の権力乱用、さらにテレビパーソンの不正義を描いた。それが挑戦的だとされたが、杜撰な捜査と裁判による冤罪があることは 視聴者の大半が知っていること。政治家が清廉な存在だと思っている人も少数派に違いない。

 テレビパーソンが正義の人ばかりではないことも誰だって知っている。みんなが知っていることを描いただけで「ギリギリまで攻めた」ドラマと言われた。やはりドラマの自由度は昭和期より狭まっているのではないか。

 また、「虎に翼」、「エルピス」のように硬派な面がある作品ほど政治的と言われやすいが、実際にはドラマの多くに政治色がある。ドラマには今の時代が投影されるから、当然である。

 たとえば、現在放送中で生見愛瑠(22)が主演しているTBS「くるり~誰が私と恋をした?~」(火曜午後10時)はラブストーリーだが、やっぱり政治色があった。

 第1回。生見が演じる主人公が、派遣社員を都合の良い存在と捉える同僚たちに憤った。派遣社員制度は1986年にスタートしたが、いまだ派遣社員側に不利だとの批判が根強い。主人公の憤りは労働政策批判とも言えたが、このドラマは糾弾されない。不公平だ。

 劇作家で演出家の鴻上尚史氏(65)は5月7日、文化に政治を持ち込むなという声について、X(旧ツイッター)でこう意見した。

「結局、『ドラマに俺の気に入らないことを持ち込むな』『歌に私が反対してることを持ち込むな』と言うことだと思います」

 そうなのかも知れない。しかし、スポンサーが空気の存在を気にすることに変わりはない。ドラマの幅が狭まりかねない。

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