父親が自死してわかった母親と愛人との理解不能な三角関係…息子の43歲不倫夫は「結局、自分も愛人に全く同じセリフを言ってしまった」

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父のようにはなれない

 そういう関係になりたい気持ちはあったが、実際に既婚でありながら彼女と関係を結ぶのは気が引けた。お互いに既婚なのだから対等なはずだが、「男女の関係になると、自分の中でよけいな感情が出てくるのが怖かった」そうだ。父のように見事なふたまたは、自分にはできるはずもないのだから。

「でも女性に恥をかかせるわけにもいかない。決意を固めてある日、ホテルに行きました。正直に言うと、他の女性としたところで自分が変わるわけでもなかった。ただ、急に責任感みたいなものを感じましたね」

 少しずつ「浮気」に慣れていったと晋也さんは言う。だが、コロナ禍に入り、真優さんとはまったく会えなくなった。「お互いに家庭に影響を及ぼしたら大変だから」と彼女はきっぱり言った。

「そのときですね、真優さんとずっとつきあっていこうと思ったのは。丸2年、LINEのやりとりしかしていなかったけど、ここ2年はまた会っています。月に1回か2回、本当にささやかな逢瀬ですが、僕にはこの程度がいちばんいいのかもしれない」

 とはいえ、その逢瀬時に、ふたりは燃えに燃える。ふだん会えない分、お互いを貪るような感覚があると彼は言う。

「もっと会いたい、もっと一緒にいたい。その気持ちを彼女にぶつけたとき、彼女は『しょせん、お互いに相手がいちばんというわけじゃないでしょ。私は夫に愛されてないからあなたがいちばんだけど』と突然、本音を見せてくれたんです。あなたにとって私は何なのと言われて、『大事なのは妻だけど、愛しているのはきみだよ。この気持ちをわかってほしい。いつでもほしいのはきみだけだ』と言ってしまいました。恋愛感情の高まりが、そんなキザなことを言わせるんでしょうか」

 彼は照れたのか一気に水を飲み干した。

「いつかオヤジのように」

 気づいてみれば自分も父親と同じように“二股愛”に邁進している。だが、彼自身は分けて考えているから二股ではないと思っているようだ。

「それでもいつかオヤジのように、すべてに絶望することになるのかどうか……。わかりませんが、僕は少なくとも妻や子どもたちに知られるようなことはしません。万が一、疑われたときはやはり真優さんとはきっぱり別れるつもりでいます。まあ、本当にそうならないとわかりませんが」

 大事なものと愛しているもの、それは比べられるものではない。結局は、両方大事で、両方愛しているはずだ。それでも「ひとりの人しか愛してはいけない」という法的・倫理的な常識が彼を縛ろうとしている。状況、および晋也さんの心境に変化があったら、また連絡くださいと彼に伝えた。彼はまた照れたようなチャーミングな笑みを浮かべた。

前編【高校時代に父親の愛人を好きになってしまった…43歳男性が“両親は世間の常識からかけ離れたところで生きている”と感じた瞬間とは】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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