父親が自死してわかった母親と愛人との理解不能な三角関係…息子の43歲不倫夫は「結局、自分も愛人に全く同じセリフを言ってしまった」

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息子の入学式で「何かが変わった」 マッチングアプリへ…

 娘に続き、3年後に息子も生まれた。日々の忙しさにかまけながらも、彼は「心を乱さない生き方」を必死に紡いできたという。ふと父や暁子さんのことを思い出すと、沼に引きずり込まれるような、足元がぐらぐら揺れるような感覚に陥るからだ。日常生活を大事にすること、家庭を大事にすること。それ以外のことは考えない。彼はそう決めていた。

 そんな彼の中で「何かが変わった」のは、息子が小学校に入ったころだった。今から5年前のことだ。

「息子の入学式のとき、たくさん写真や動画を撮りながら、自分の入学式のことを思い出しました。父と手をつないで学校に行った。母は遅れてやってきた。その日の夜は、近くのお鮨屋さんで好きなだけ食べていいよと言われて……。楽しかったんですよ。楽しかったけど、俯瞰で見ると、何かが物悲しい。なんだろうとよくよく考えたら、父も母も、子どもに縛られずに生きたい人たちではなかったか、と。つまり僕がいることで本当はもっと自由だったはずの彼らの人生を抑え込んでしまったのではないか。わかっているんです、こういう思考がよくないことは。ただ、そのときはそう思ってしまったんです」

 彼は亜希子さんと連絡を密にとりあって子どもたち最優先で生活してきた。だが、もしかしたら、いつか子どもたちも自分と同じような感覚に陥るのかもしれない。そこまで考える必要はないのかもしれないが、彼の心には「子どもたちが親からの影響を受けすぎないように育てたい」という思いがあった。

「子ども以外のことに目を向けたい、目を向けようという意識があったのかなあ。言い訳かもしれないし、ちょっと平常心ではなかったのかもしれないし。言葉でどう説明したらいいのかわからないんですが、息子の入学式では、かつての自分についてかなりいろいろ考えさせられました」

 何かから解放されたかったのか、気持ちを吐露する場がほしかったのか、はたまた日常から逃げたかったのか。晋也さんは女性に逃げた。既婚者がメインのマッチングアプリに手を出したのだ。

「そこで知り合った真優さんとデートするようになりました。彼女も6歳ほど年下の既婚者ですが、お見合いで結婚し、デートらしいデートをしたことがないと言うんです。それで週末、ふたりとも家庭には仕事だと偽って外で待ち合わせ、映画を観たりカフェで話し込んだり、公園を散歩したりしました。学生時代はフランス文学を学んでいたと聞き、僕も久しぶりに文学談義を楽しんで。そんなデートが3ヶ月ほど続いたころ、彼女は『私は女としては魅力がないですか』と言いだした」

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