「YouTuber面白くない」発言、ギャンブルと借金…霜降り明星・粗品がヒールキャラを“演じる”理由

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

芸人としての美意識のようなもの

 粗品はゲーム配信でスーパーチャット(投げ銭コメント)をしてくれる人に対しても、もらえる金額の大小に応じて「太客」「細客」などと呼んで、明確に区別する対応をしている。

 これらの行動だけを見るといかにも金の亡者のような感じがするが、実際にはそのような振る舞いで見る人を楽しませることに徹していて、お金そのものにはさほど興味がないようにも感じられる。

 前述の毒舌キャラについても同じことが言える。粗品がYouTuberを心から憎んでいたり、恨みを持っていたりするようには見えない。単に場を盛り上げるための軽口として、深く考えずにしゃべっているように見える。

 その裏には「タブーにとらわれず思ったことを好き勝手に言って笑いを取れる人間でありたい」という彼の芸人としての美意識のようなものも感じられる。

自分のやることに圧倒的な自信

 今の粗品は多くのファンに愛され、熱烈に支持されている。テレビやラジオなどで活躍するのはもちろん、個人のYouTubeチャンネルの登録者数も195万人を超えている。

 粗品が仲間の芸人たちとサイコロゲームの「チンチロ」で勝負する企画も話題になっていて、これだけをやる武道館ライブも行われた。

 さらに、音楽の素養もある彼はミュージシャンとしても活動を始めていて、4月17日には全曲書き下ろし&歌唱のファーストアルバム「星彩と大義のアリア」をリリースした。活動の幅広さとそれぞれの密度が尋常ではないレベルに達している。

 粗品がヒールキャラを演じているのは、単にその方が人目を引くからであり、その方が自由で面白いと思っているからだろう。彼が自分に向けられた批判をものともせずに活動を続けていけるのは、自分のやることに圧倒的な自信があり、結果を出し続けていて、そこについていくファンが大勢いるからなのだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。