マンデラ元大統領追悼式典の「デタラメ手話通訳」が俳優に? 騒動後、精神病院に入院

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騒動後、精神病院に入院

 外信部記者が言う。

「当然、責任は主催者であった南ア政府にありますが、担当者は『ジャンティ氏を式典に派遣した会社は、突然、姿を消した』と言い張り、まともに調査しませんでした。実際、この派遣会社はほとんど実体のないペーパーカンパニーだったらしい。手話通訳は高い集中力が必要で、通常は複数の通訳を20分ほどで交代させていきますが、ジャンティさんは通常の半分程度の報酬で4時間もの間ステージに立ち続けていました」

 つまり“デタラメ手話通訳”の事件は、主催者、通訳の派遣会社、手話通訳の三者がそろって問題を抱えていたために起こった悲劇、いや喜劇だった。

 当のジャンティ氏は騒動後、国内の精神科病院に入院。しかし、ここでもある事件が起こっていた。

転職の理由

 年が明けた14年の5月、イスラエルのスタートアップ企業が自社製品のウェブCMにジャンティ氏を起用したのだ。

「CMは、『信じてください。私は本物の手話通訳です』とジャンティ氏が話す動画を、女性のナレーターが『私は手話ができません』などと“翻訳”する悪趣味な内容でした。それだけでなく、この会社はCM撮影のためにジャーナリストを名乗る人物に病院を訪れさせ、『家族の行事に出席させるため』とうそ偽りを並べてジャンティ氏を一時退院させているのです。当然、多くの批判が出ましたが、会社側は『統合失調症の患者に働き口を与えた』と意に介しませんでした」

 この年の12月には英デイリーテレグラフ紙にこんな記事が掲載されていた。

〈タマサンカ・ジャンティが手話通訳をやめて「広告業と俳優業」に転職しようとしている〉

 記事によれば、転職の理由は〈生業だった“手話”を奪われ、男として家族を養うために働かねばならないから〉ということだが、

「彼は妻と3人の幼子を抱えていましたから、『養うために働かねば』というのは本当なのでしょう。実際、ジャンティ氏の入院中に妻が地元の報道機関のインタビューに応じ、『夫の不在で家計が大変だ』と話していましたから」

 その後、俳優として成功したかは杳(よう)として知れない。

週刊新潮 2024年5月2・9日号掲載

特別読物「これぞ世界仰天ニュース 国際版『あの人は今』」より

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