山本由伸の特別起用法は、ドジャースの佐々木朗希に対するメッセージなのか

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朗希に必要なのは回復力

 5月6日にZOZOマリンスタジアムで行われた千葉ロッテ対埼玉西武戦でのこと。翌7日の同カードの先発投手が発表された瞬間、ライトスタンドのロッテファンがどよめいた。アナウンスされたのは、予想を裏切って佐々木朗希(22)ではなく、ダイクストラ(33)だったからだ。

「佐々木は4月23日以降、火曜日に先発登板してきました。ゴールデンウィーク期間の連戦で4連勝し3位に浮上した吉井理人監督(59)は、2位争いとなる10日からの日本ハム戦に佐々木を温存したんです。佐々木は、10日に先発。123球を投げましたが、自己ワーストの5失点。6回でノックアウトされました」(スポーツ紙記者)

 佐々木の今季初登板は開幕から3試合目の3月31日、日曜日だった。その後は中6日の登板間隔で日曜日に先発してきたが、火曜日への配置換えは「エースへのステップアップ」でもあった。

 ペナントレースの通常日程は火曜日に始まって日曜日に終わる6連戦が繰り返される。その6連戦の初戦を取るか落とすかで、チームのモチベーションは大きく変わってくる。ホームゲームの場合、観客動員が見込める週末にエースや勝ち頭をあてたいところだが、最近は火曜日に当てるのがセオリーになっている。佐々木は「大事な火曜日」を託されたわけだが、

「マリーンズファンや球団関係者の関心は、大事な火曜日に佐々木がチームに貢献できたかどうかではなく、彼の投球数に集まっています。それも100球超えができたかどうかにです」(球団関係者)

 10日の試合で、自己最多の123球を投げたが、「100球超え」と言って思い出されるのが、4月7日のオリックス戦だ。試合序盤からコントロールに苦しみ、6イニングを投げ終えた時点で投球数は98。これまで佐々木は「100球メド」で降板してきているのをファンも知っていた。だから、7回のマウンドに佐々木が向かっただけでスタンドが沸いた。この登板は本人が志願したものだったという。

「いつも通り、良いピッチングだったよ」

 試合後、視察で訪れていたドジャースのスカウトはそう答えた。ロッテ球団が明かしたところでは、同日はドジャースを始めとするメジャー5球団のスカウトがネット裏に座っていたという。もっとも、「100球超え」についてはどの球団スカウトもコメントはしていない。

「佐々木が志願して100球以上を投げた件は、米国では取り上げられていません。100球以上投げられるようになってほしいと思ってはいるでしょうが、メジャースカウトが本当に確かめようとしているのは、中5日のローテーションでしっかりと“シーズンを投げ切る体力”があるのかどうかです。つまり100球超えのスタミナと、投球後の回復力です」(米国人ライター)

気になる山本由伸の起用法

 メジャーリーグで成功できるかどうかのカギはシーズンを乗り切る持久力、タフネスさにあるようだ。思えば、ドジャース・山本由伸(25)でさえ、いまだ中6日で投げている。

 山本は日本時間5月8日のマーリンズ戦に先発し、4勝目を挙げているが、メジャー自己最多となる8イニングを投げきった。初回と6回にソロアーチを浴び、逆に闘争心に火が点いたのか、8回を投了した瞬間、右拳を作って雄叫びも上げていた。ここまで感情をあらわにした姿はオリックス時代にも見られなかった。

「この8イニングを投げた試合のポイントは、制球力です。実に75.2%が、ストライク投球でした」(前出・同)

 その高いストライク投球率によるものだろう。8回まで投げたとはいえ。この日の投球数は97。ここまで山本は8試合に登板しているが、100球以上を投げたことは一度もない。4月19日のメッツ戦で投じた99球が最高で、デーブ・ロバーツ監督(51)も山本に「100球以上」を求めていなかった。チームメイトで開幕投手を務めたグラスノー(30)は4月3日のジャイアンツ戦、同21日のメッツ戦などで100球以上を投げているのに、だ。

「ドジャースは40試合に到達する前に、2、3度ブルペンデーを設けています」(現地記者)

 ブルペンデーとは、先発投手を起用せず、リリーバーを総動員して試合を成立させること。今年に限って言えば、山本の起用法が大きく関係している。

 ドジャースはメジャーリーグでは一般的な「5人制」で先発投手陣を編成している。しかし、山本だけはオリックス時代と同じ中6日で登板させる方針で、他の先発投手が中5日の間隔を基本としているため、時折、「先発投手の不在日」が生じてしまう。

「山本はメジャー投手史上、最大規模の12年3億2500万ドル(約463億円)で契約しました。将来的には中5日になると思いますが、メジャーリーグでの生活に慣れるまではオリックス時代と同じ登板間隔で起用していく方針です」(前出・米国人ライター)

 ロバーツ監督は4月6日のカブス戦後、山本を僅か80球で交代させたことを質問され、「Crisis Management(危機管理)」という言葉を使って、オリックス時代と同じ中6日での登板を続ける意義も説明していた。将来のエースに不慣れなことを強いて故障させたくないというわけだ。

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