大谷翔平は「広告打ち切り」待ったなし? 水原問題で気になる今後(中川淳一郎)

  • ブックマーク

 大谷翔平の元通訳・水原一平のギャンブル依存症関連の話題が、3月下旬からずーっと世を席巻していますが、今後発生するかもしれない大谷にとっての迷惑事を予想します。それは、大谷が登場する広告の契約延長がなくなることです。

 最近オンエアされたCMはザッとこんな感じ。ディップ(バイト・パート情報サイト)、コーセー(スキンケア)、西川(マットレス)、ECC(英会話)、セイコーウオッチ、JAL、興和(湿布等)、ニューバランス、三菱UFJ銀行。

 大谷は被害者だ、水原が悪いんだ、大谷は利用されただけだ、永遠の野球小僧でお金に関心がないんだ……的な擁護はされているものの、今後水原関連報道が裁判等を経てさらに増えるかもしれません。

 ニュース番組や情報番組でも上記のような企業はスポンサー提供しているわけです。すると「水原被告の悪質さ」を紹介するにあたり、大谷の困り顔とかも同時に流れます。その直後のCMで大谷が笑顔だったら違和感ありまくり。

 さらに現在の私がそうなのですが、街中や公共交通機関で大谷の広告を見ると、ギャンブラー水原の顔が頭に浮かんでしまう。あれだけ一緒にいる時間が長く、今年の開幕戦までは大谷と並んでベンチで隣り合わせだったのですから、もはやお笑いコンビのごとく二人を見てしまう。ピンの浜田雅功を見ると松本人志も連想してしまうようなものです。

 こうした声がカスタマーセンターに寄せられ、それが増え続けたら、「事態が落ち着くまで契約は一旦打ち切りますかね」と考える企業が出る可能性がある。企業の宣伝部と広告代理店って、消費者の声にとにかく敏感です。

 この件で思い出すのが某大物女優。大企業のCMにおしどり夫婦役で出演していたのですが、実際に彼女が結婚を発表した時のことです。その夫が過去には不良っぽい人物だったとの報道が出た土曜日、緊急検討会議が招集され、宣伝部員と広告代理店、制作会社が呼び出されたのです。私も「ネット世論の専門家」ということで意見を求められました。

「逮捕経験ありではないし、すぐに人々は忘れるので何もしないでいいです。本人は悪くないし、夫だって今は真っ当な人生を送っている。契約解除をしてむしろ違約金を請求されたりする恐れがありますよ」とだけ助言をし、彼女は降板せず。大谷もこうなればいいですね。

 広告関連のコンビで思い出すのは、前園真聖氏と中田英寿氏が出ていた「日清ラ王」のCMです。アパートの部屋で寝転がる二人。怠惰でモテない大学生といった感じです。会話は「ヒデ~」「ハン?」「ラーメン食いたくねぇ?」「行くか、ゾノ!」で、シャキッと立ち上がり「オッシャ」と気合を入れる。脱兎のごとく走る二人。女子高生の間を走ると風圧でスカートがめくれ「キャー!」と叫ぶ彼女たち。二人はコンビニに着き、ラ王を購入。最後のシーンは前園氏の「これだな」に、中田氏が「おう!」と言う。イタリア移籍でカリスマとなった中田氏ですが、当時は前園氏の子分的扱いでした。このCMは今でもほのぼのCMとしてネットで人気です。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2024年5月2・9日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。