「あなたしかいない」で始まり、最後は「借りたっけ?」 40代男性から73万円をだまし取った「22歳・頂き女子」のふてぶてし過ぎる「詐欺LINE」

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LINEで始まった怒涛の「病み営業」

 Aさんが鼻の下を伸ばしている側で加藤容疑者は早速、「仕事」に取り掛かっていた。

「『亡くなった母親から引き継いだ借金があって…』『まだ高校生の妹の生活の面倒を見ないといけなくて』などと暗い表情で語るのです」

 初顔合わせ後、「悩み相談」はLINE上で本格化していく。加藤容疑者は翌日には〈Aさんのこと、すごく好きになった〉と切り出した後、こう綴った。

〈私はシングルマザーの母親に育てられたけど母親は他界してるのは伝えたよね。それで私は今、親から引き継いだ200万くらい借金があります。奨学金もしっかり背負ってます。正直バイトばかりなのも生活はもちろん妹もですが、このためでもあって、休みたくても休めない日々です。こんな私でも本当に受け入れてくれますか〉

 この告白に対しAさんは〈話しにくいこと言ってくれてありがとう〉〈気にしないよ〉と返している。マッチングアプリを介して初めて会った女性に借金苦の相談をされて、怪しいと感じなかったのか。

「まさか借金を僕に負わせようとしているとは思わなかったのです。自分で返していくんだと思っていたので、軽く流してしまった」

 これこそが「りりちゃんマニュアル」が勧めている「病み営業」である。身内の不幸などが理由で借金を抱え込んで病んでいる自分を語り、「一緒になりたい」「頼れる人はあなたしかいない」とアピールし続ける。そうして、相手の欲望をかき乱し、向こうから「助けてあげる」と申し出るよう差し向けるのだ。この一連の仕掛けを渡辺被告は「魔法をかける」と呼んでいた。

一回引いたのも“メソッド”を意識した?

 実際、この後、Aさんは加藤容疑者からLINE攻勢を受け、次第に金を用立てることを考えるようになるのだ。

〈すぐお付き合いしたい気持ちはあるけど、返済終わるまでお付き合いはやめておきたいです。200万あって、今残り50万少しなのでまだまだかかりますが〉(加藤容疑者のLINEメッセージ)

〈お付き合いするときにはせめて借金は返しておきたいんです〉(同)

〈気持ちはもちろん付き合いたいよ。でも借金は返しておかないとと思ってる〉(同)

 そして、初顔合わせから9日経過した20日の食事デートで、とうとうAさんは「僕が貸そうか」と提案した。だが、加藤容疑者はこの申し出を受け入れようとはしなかったという。

「なぜか『うーん』と渋っていた。そして別れ際、名古屋駅の改札で僕の両手を包み込むように握り、祈るような仕草をしたあと、上目遣いで『また会ってくれる?』と懇願してきました」

 実は、これも「りりちゃんメソッド」が勧める「一回引く」という重要な駆け引き。こうして相手の助けてあげたいという気持ちをくすぐり、相手から積極的に助力を申し出るのを待つのである。

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