「住友化学」の危機 過去最悪の赤字で4000人リストラ…自民党への企業献金は年間5000万円、トヨタと並んで1位の事情
住友化学が過去最大の経営赤字に陥っている。社長自らが4000人もの人員削減を発表したことからも、異常事態であることは間違いないだろう。しかも、同社は経団連会長の出身企業であるために、財界からも大きな注目を集めているのだ。
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【写真】東芝の土光敏夫氏からトヨタの豊田章一郎氏まで 歴代経団連会長の錚々たる顔ぶれ
4月30日、記者会見に臨んだ住友化学・岩田圭一社長は終始厳しい表情を崩さなかった。この日同社は、昨年度の最終赤字が過去最大となる3100億円に拡大する見通しを発表。抜本的改革が必要だとして、グループ内で4000人規模の人員削減を行うとまで表明したものだから、世間には大きな衝撃を与えることになったのである。
だが、一般消費者が触れる商品を扱っているわけでもない住友化学の名がここまで広く浸透しているのは、同社の十倉雅和会長が、日本経済団体連合会(経団連)の会長を務めていることが大きく影響している。経団連の事情に詳しいジャーナリストによれば、
「住友化学からは、これまで経団連の会長が2人も出ています。1人目は、当時の安倍元総理と関係が悪化したことでも話題になった米倉弘昌氏。経団連の会長は『非財閥系のものづくり企業』から選ばれるという不文律があったのですが、リーマンショックで各社が打撃を受けたことで、有力候補が軒並み辞退。それで米倉氏にその座がまわってきた形です。そして2人目が、現会長を務める十倉氏です。その前の会長、日立製作所の中西宏明氏が病気で退任することになり、中西と親交が深く、また米倉会長時代のこともよく知っているということで、十倉氏が急遽務めることになったのです」
かつて経団連会長を複数回にわたって送り出してきた企業といえば、東芝、新日鐵、トヨタと錚々たる名が連なる。住友化学がこれら名門と肩を並べるまでには、このような経緯があったのだ。
5000万円の政治献金
経団連は自民党に対し、毎年24億円もの献金を行っている。実は、このうち最も多くの額を負担している企業こそ、住友化学である。自民党の政治資金団体「国民政治協会」の収支報告書で、公表されている中で最新の22年度版を見てみると、トヨタ自動車と並んで、同社は5000万円もの献金を行っていることがわかる。
「外部への寄付や会費など、経団連として加盟企業に対して金銭的負担を求める場合、やはり会長企業が率先して多く負担するのが常道になっています。副会長企業の方がよっぽどお金を持っているような今の体制であっても、そこは簡単には変わりません。とはいえ、過去最大レベルの赤字を抱えてもなお、多額の政治献金を続けるとあれば、違和感を持たれる方は多いのではないでしょうか」(先のジャーナリスト)
政治資金規正法によれば、3年以上にわたって赤字状態にある企業は寄付ができないとされている。同社の場合、それまでは黒字経営が続いていたところからの急転直下、という状態だ。今後の献金の行方に、注目が集まっているのである。
なお、経団連による自民党への献金の歴史やカラクリ、最新の収支報告書の読み解きなどについては、有料記事「自民党の大スポンサー『経団連』とは一体何なのか 『会長選びの実態』から『政治献金のカラクリ』まで…知られざる内情に迫る」で詳報している。
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