米国は金利高止まりでインフレ収まらず…増加中の「仕事はあるが資産は少ない」層が直面する苦境

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商業用不動産市場に大打撃か

 長引くインフレのせいでFRBの利下げのタイミングが見通せなくなっている。バイデン政権は今年11月の大統領選前の利下げに期待を寄せているが、その可能性は低くなったと言わざるを得ない。

 高金利が2026年まで続く可能性も指摘され始めている。気がかりなのは、金利の高止まりが実体経済に及ぼす悪影響だ。最も大きな打撃を被るのは商業用不動産市場だろう。

 商業用不動産の差し押さえラッシュが始まっており、その水準は過去10年で最高となっている(4月22日付ZeroHedge)。

 米調査企業MSCIによれば、3月末時点の商業用不動産に関する不良債務の総額は886億ドル(約13兆2900億円)だった。内訳はオフィス関連が380億ドル、小売関連が218億ドル、ホテル関連が141億ドルだ。

 高金利が続けば、不良債務が今後さらに拡大することは確実だ。商業用不動産向け融資に積極的だった地方銀行やノンバンクが、今年後半にかけて大量に破綻する可能性が排除できなくなっている。

 これによってリーマンショックのような金融危機が起きるリスクは小さいと思われるものの、米国経済は不調をきたすことになるだろう。

「大規模な雇用調整」は時間の問題?

 金融環境は既に悪化しつつある。

 FRBは5月6日、第1四半期に企業向けの融資基準を厳しくした銀行の割合が3四半期ぶりに拡大したことを明らかにした。

 米主要地銀の第1四半期の純利益の合計は前年に比べて62%減少しており(5月7日付日本経済新聞)、業績が悪化した地銀などが融資に慎重な姿勢に傾いている。

 そのとばっちりを受けているのが製造業だ。

 米サプライマネジメント協会(ISM)が5月1日に発表した4月の米製造業景況感指数(PMI)は前月比1.1ポイント減の49.2だった。好不況の分かれ目である50を再び下回った。仕入れ価格の上昇に加えて、高金利の長期化と金融機関の貸し渋りが、業況の悪化につながったと言われている。

 この傾向が特に顕著なのが雇用の4分の3を占める中小企業だ。名目GDPを大きく上回る借り入れコストに苦しめられており、「大規模な雇用調整は時間の問題だ」と懸念されている。

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