平成最後の大乱闘!阪神コーチがヤクルトの助っ人に飛び蹴りも…藤浪晋太郎の死球で両軍が入り乱れた“京セラドームの乱”

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「犠牲者を出したくなかった」

 金本監督は「横から不意打ちで殴ってきたら、許せないでしょ」と矢野コーチの心中を慮り、騒動の発端となった藤浪の死球についても、「こっちも原口が当てられているわけだから、お返ししたわけじゃないし。勝負の中で当てたんだから」と故意ではなかったことを強調した。

 矢野コーチも自身の行動を「考えて何かをする場面ではなかったし、一番は晋太郎を守ることかな。その中でたまたまバレンティンがオレに来たから、応戦してしまったということ。お互いそういう風なことをしようとやっているわけじゃない。真剣勝負の中だから。チームとして勝ちたいという気持ちがそうなったと思う」と振り返った。

 騒動が収まると、責任審判の杉永政信二塁塁審が「先に手を出したバレンティンとそれに対応した矢野コーチを退場処分にしました」とアナウンスし、両人に喧嘩両成敗の形で退場を宣告。藤浪については「(危険球)退場に値する死球ではないと判断して、警告試合としました。今日の場合は、(ヤクルト側は危険球退場を主張)両方が納得する状況ではなかったでしょう」と説明した。

 結果的に死球禍を大乱闘にエスカレートさせることになったバレンティンは「チームメイトを守ろうという気持ちで割って入ろうとしたら、結果として向こうが転んだ。暴力を振るおうとしたわけではない。今日(藤浪)は全体的にも4、5球危ない球が来た。乱闘したいわけではないが、畠山がぶつけられて、2人目、3人目と犠牲者を出したくなかった」と挑発する意図がなかったことを強調したが、「先に手を出した」ことから、矢野コーチより5万円多い20万円の制裁金を科せられた。

「原因は金本監督?」の声も

 これには真中満監督も「5万円の差は何なのか。(矢野コーチは)勝手に走ってきて、(バレンティンに)ぶつかってつまづいたんだから。それをバレンティンのせいにしちゃってる」と納得しかねる様子だった。

 また、乱闘シーンの映像をよく見ると、矢野コーチはすぐ隣りにいた金本監督の左腕に突き飛ばされたようにも見え、ファンの間で「原因は金本監督?」の声が出たことも懐かしく思い出される。

 近年はコリジョンルールやリクエスト制導入等で乱闘の要因となるものが減ってきているとはいえ、令和以降も、2019年8月13日の西武対オリックスで、死球をきっかけに両軍ナインの乱闘騒ぎが起き、史上最多タイの3人(うち2人は危険球退場)が退場する事件が起きている。

 死球などがきっかけで、ちょっとしたボタンの掛け違いから、昭和・平成期のような大乱闘劇に発展しかねないケースもあるということを忘れてはならない。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。