逮捕直前、社長は世間のさらし者にされた…東大薬学部出身のロン毛弁護士が明かす、警視庁の卑劣な捜査【大川原化工機冤罪事件】
印象深い事件になった
司法研修を終了すると、東京の鳥飼総合法律事務所に所属する「イソ弁(法律事務所に勤務する弁護士)」として、そのキャリアをスタートさせた。16年間の実地経験を踏んだ後、2016年に独立し、現在の和田倉門法律事務所を10人の仲間と立ち上げた。今は17人の大所帯の代表だが、依頼される仕事のほとんどは民事案件だ。
「顧問先の社長がちょっとした事件に巻き込まれたとか、社員が事件を起こしたとかでたまに担当することはありましたが、基本的に刑事事件はほとんどやっていませんでした」
たまたま顧問弁護士を務めていた大川原化工機で「不正輸出」事件が起こり、刑事事件に関わるようになる。
「経済的な規模ならもっと大きな案件も扱っていました。でも、社会的にこれだけ大きくなり、印象深い事件は、大川原事件が初めてでした」
記者会見をするのも、この事件が初めてだった。
「まあ、こちら側が正義であり、会見で頭を下げるわけではないので、そんなに苦労しませんでした。顧問を務める他の会社では、謝罪会見の文案づくりとかの裏方はやっていました。そっちのほうがしんどいですよ」
識者コメントの捏造も問題
控訴へ向けて内容を分かりやすく記者に説明する「事前レク」もした。
「大川原化工機の事件はサイエンスの専門的な部分とか難しいことも多いのですが、東京の司法記者会の記者さんたちはみんな優秀で、よく理解してくれていましたね」
国賠訴訟の1審の東京地裁判決では、都と国に計約1億6000万円の賠償が命じられた。控訴審は、6月から東京高裁で始まる。
警視庁公安部は、大川原化工機の機械が輸出規制に該当するか否かについて複数の学者らに意見を求めた。しかし、誤った内容の報告書が作成されていたという。
「四ノ宮(成祥)さん(当時、防衛医科大学校前学校長)以外の先生たちは少し様子見をしていたようですが、昨年の(一審の)勝訴判決で風向きが変わったようです。言ってないことが書かれていることを明確に証言してくれています。一審は四ノ宮さんだけだったせいか、判決は識者コメントの捏造には触れませんでしたが、控訴審では裁判所もそうはいかないのでは」
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