水原一平裁判 米国では罪を認めれば簡単に司法取引が成立する理由 「量刑算定表のレベルは2から3ほど下がる」
アメリカ量刑ガイドライン
「連邦法違反の犯罪についての量刑は、かなりシステマティックに算定されていることを説明する必要があります。アメリカ量刑委員会が『量刑ガイドライン』というものを毎年、発行しており、これは600ページを超える分厚いものです。そして量刑を決定するためには、縦軸が犯罪レベル、横軸が犯罪歴という量刑算定表を使用するのです」(同・村尾弁護士)
東町法律事務所の公式サイトで村尾氏はコラムを連載しているが、ここにガイドラインの使用例が説明されている(註2)。
例えば詐欺罪の場合、最長で20年以上の禁錮刑となるものは「レベル7」に該当し、被害額が950万ドル以上は「レベル20」となっている。つまり950万ドル以上の詐欺罪は「レベル27」。そこで量刑算定表を見てみると、前科がない被告人に課せられる刑は「70か月から87か月」ということが分かる──。
「さらに前科前歴、考慮すべき事情、情状酌量といった要素も加わりますから、簡単には決まりません。私は水原容疑者に関する全ての事実関係を把握していないので、量刑を予測するのは不可能というわけです。ただ一般論として、司法取引が成立するとレベルが2から3ほど下がると言われています。レベル27が25になったり24になったりするわけです」(同・村尾弁護士)
収監の可能性も
水原容疑者は現地時間の5月9日に罪状認否に臨む見通しだと報じられている。村尾弁護士は「今後の展開は早いと考えられます」と言う。
「水原容疑者が司法取引に応じるのであれば罪状認否で有罪を認めるはずです。その後、弁護側と捜査当局と結んだ司法取引の合意内容が裁判所で審査されます。取引の内容を判事がチェックし、適切だと認められれば司法取引が成立します。一方、司法取引の内容が不当であると判断された場合には、司法取引の成立が認められません。司法取引が成立している事案では、罪状認否のすぐ後に判決が下る場合もありますが、別の期日で判決を言い渡す場合もあります。少なくとも数か月以内に判決を言い渡されることになると思います」
減刑の予測が難しいことは先に説明したが、村尾弁護士は「罰金刑だけで済む」という報道に関しては否定的だ。
「被害額が巨額ですし、起訴状も目を通しましたが、犯行の内容があまりにも悪質です。いくら司法取引に応じたとしても、禁固刑の実刑判決は下るのではないでしょうか」
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