元米軍人が出版した「昭和天皇ヘイト本」 「旧日本軍が3000万人を虐殺」の記述に専門家は「根拠がなく、引用元もずさん」

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中国政府の援助、支援は否定するが…

 加えて本書の推薦者には、米軍の元幹部や著名な大学教授も名前を連ねている。

「リッグ氏自身もイェール大学を卒業したインテリで、後に英国のケンブリッジ大学で博士号を取得しています。過去には7冊ほどの著書を出版しており、どれも一読に値するものでした」

 とはいえ、同書が列挙する“歴史的事実”のほとんどは、中国や韓国の主張とほぼ同じ。南京事件に関すると思しき箇所には“少なくとも30万人の中国民間人が残忍な方法で殺され、8万人以上の女性がレイプされた”とある。

「あまりに偏りがある書き方なので〈中国政府から資金援助や何らかの協力を受けているのではないか、との疑義が呈されると思う〉と指摘すると、リッグ氏は資料の整理を友人の中国人女性に手伝ってもらったこと、彼女の学友に南京市で公文書を扱う主任記録官がいたことを明かしました」

 もっとも、それ以外の援助や支援は強い口調で明確に否定したという。

別の場所で撮られたと証明された写真を使用

 リッグ氏は、このインタビューで日本での取材の際に自民党の新藤義孝経済再生担当大臣から協力を得ていたとも語っている。

〈日本では多くのものが封印されていて読むことができませんが、(中略)新藤義孝氏といい関係だったので助かった。そんなこともあって東京都公文書館に行った時、スタッフの方がとても親切でした。彼らは事前に調べ物をしてくれてすべての書類を取り出してくれた〉

 新藤事務所に真偽を尋ねたものの回答はなし。その新藤氏は、先の大戦末期に硫黄島で散った栗林忠道中将の孫。事実なら、経緯はどうあれ、その来歴にキズを付ける失態といえそうだ。

 ともあれ、近現代史に詳しい麗澤大学大学院の高橋史朗特別教授は、リッグ氏と同書を厳しく批判する。

「本人は学術書だと主張しているそうですが、本文はもとより引用元もずさん。総じて読むに堪えません。まず、慰安婦については“平均年齢がわずか15歳”“日本は約25万人の女性を犯し、数百万の家族を破壊”“推定20万人の慰安婦のうち、悲惨な試練を生き延びたのは、わずか10%”などと、根拠のない誤った内容が断定的に書かれています」

 それは南京事件も同様だ。

「戦時中の日本の非道を訴える人々は、偽造文書や偽写真を用いることが多い。この本も、最近の研究によって別の場所で撮影されたことが証明されている写真を、米国立公文書館所蔵のものと謳って掲載している」

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